新日本プロレスは逆境の中で多くを学んだ
プロレスといえばここ20年、「K-1」や総合格闘技の陰に隠れてしまい、一般の人にとってはかつての隆盛が信じられない存在のようだが、実は状況が変化しているのだという。「村田晴郎&鈴木健.txtウェブラジオ『DX-R』」でパーソナリティーを勤めている元・週刊プロレス編集次長で現在はフリー編集ライターとプロレス中継コメンテーターの鈴木健さんは
「世間一般に届いていないだけで、選手の能力、試合のクオリティー、企業努力、そしてファンの思い入れの深さと、いずれも高くなっているんです」
と解説する。ただし、それは現在の話であり、「K-1」などが登場して以降は暗い時代が続いた、とも。
90年代に起きた格闘技ブームはプロレスも巻き込み、「プロレス最強」を謳ったプロレスラーが格闘技選手と次々と戦っては敗れてしまった。そのため「強さ」を絶対的価値観として打ち出せなくなってしまった。新日本はブームの影響を受け格闘技色の強い試合をするようになったのだが、これらのことが本来のプロレスらしいプロレスからかけ離れてしまい、ファンを手放してしまう結果になったのだという。
また、プロレス団体の乱立が起こったのも業界を脆弱化させた。デスマッチやイケメンレスラーが登場する団体などファンの多様化を受け止めるはずだったのだが、情報が過多になりすぎ、観戦に行く機会が減ることになった、という。
「ただし、これを教訓として、新日本はプロレス団体として本当にやるべきことを学び、どんなにドン底の状態で苦しんでも、奇をてらうことなく地道に時間をかけて盛り返してきました」
と鈴木さんは説明する。つまり「いい状態」になってきているというのだ。
プロレスは力道山時代から大衆娯楽として日本国民の中で根づいているため足場は強い、と力説する。今後についてはやはり「プロレスらしいプロレス」の追求であり、スター選手を輩出するのが不可欠としている。幸いにも新日では棚橋弘至選手という誰もが実力を認めるスターが育ってきた。またDDTの飯伏幸太選手といった可能性を秘めた選手もいる。そして、このプロレスのすばらしさを少しでも多くの人に発信してもらいたい、と鈴木さんはブシロードの木谷社長に期待している。