英国の大物ミュージシャン、エルトン・ジョンの過激発言が話題だ。以前から歯に衣着せぬ物言いで有名だったが、最近は歌手のマドンナとの「舌戦」がエスカレートしている。
一方では、雑誌のインタビューで「キリストはゲイ」と独自の解釈を披露。キリスト教団体を中心に反発を招いてしまった。
「頭の悪い低俗なヤツ」とこき下ろす
「僕の歌は君の歌(原題『Your Song』)」や「クロコダイル・ロック」をはじめ、数々のヒット曲を生み出してきたエルトン・ジョン。1997年に英国のダイアナ元皇太子妃が自動車事故で亡くなった際に追悼曲としてリリースした「キャンドル・イン・ザ・ウィンド1997」は、世界中で3300万枚のセールスを記録した。日本にもファンは多く、何度も来日公演を開いている。
エリザベス女王から爵位を贈られ、名実ともに「超大物」のエルトンだが、たびたび「お騒がせ発言」をすることでも知られている。特に同業者であるミュージシャンが相手となると、口さがない。
近年のターゲットはマドンナだ。かねてからその実力を認めていないような発言をしていたが、2012年1月の「ゴールデングローブ賞」では「直接対決」が実現した。エルトンとレディ・ガガのデュエット曲「ハロー・ハロー」とマドンナの「マスターピース」が、いずれも映画の「主題歌賞」にノミネートされたのだ。授賞式前、記者にコメントを求められたエルトンは「マドンナが受賞することはないね」と先制パンチ、これを聞いたマドンナは「ヒドい言い方するわね」と苦笑いしながら応じた。
賞レースに勝ったのはマドンナだった。報道陣から「エルトンを負かした感想は」と問われると、「彼が私に話しかけてくれることを望むわ。私のこと嫌いみたいだから」とコメントし、最後は「彼なら別の賞をとれるはず」とエールを送る余裕までみせた。
これではエルトンが収まらない。マドンナは米国時間2月5日に行われる米プロフットボールの優勝戦「スーパーボウル」でハーフタイムショーに出演するが、テレビ番組でこのことを聞かれたエルトンは「口パクをうまくやれ」とひと言。生で歌っていないことを前提にしたような言いぶりでやゆした。
暴言は他のミュージシャンにも向けられていた。2010年11月には、英人気バンド「オアシス」について「米国で売れそこなった」とバッサリ。メンバーも「頭の悪い低俗なヤツ」とこき下ろしている。
「キリストは賢明なゲイ」で物議
悪口とは別の「舌禍事件」も起こしていた。2010年2月、米雑誌「パレード」のインタビュー記事でエルトンは、イエス・キリストについてこう答えた。
「キリストは慈しみ深い、人知を超えて賢明なゲイで、人々が抱える問題を理解していたと思う」
エルトン自身が同性愛者だというのは周知の事実で、2005年にはパートナーの男性と事実上の「結婚」を果たしている。「キリストはゲイ」との発言はエルトンの素直な心情からきたものと思われるが、反発は大きかった。米国のキリスト教団体「カトリック連盟」はただちにウェブサイト上で声明を発表し、「キリストを同性愛者と呼ぶのは、性異常者だとレッテルを張ることだ」と非難した。さらにエルトンについて「かつて『私なら宗教はすべて禁止するだろう』と口にした人物に何を期待できるというのか」と続け、以後エルトンをまともに相手しないような意志表示をした。
一方、エルトンは記事が出た後に米国のテレビ番組に出演。自身の発言について、「あくまで私から見たキリスト像であり、皆さんに対して『キリストはゲイだった』と断定して言っているわけではない」と弁解した。