警察のサイバーパトロールなどから、ファイル共有ソフトで児童ポルノを公開したことが分かって逮捕されるケースが相次いでいる。それも、ソフトの種類によっては、入手しただけで逮捕される可能性があるようだ。
「容疑者は、入手と同時にネット上で自動公開されることを認識していました。ですから、公開する目的で児童ポルノを所持していたということです」
警察がサイバーパトロール強化で逮捕続々
熊本県在住の無職男性(35)を児童ポルノ禁止法違反の現行犯で2012年1月31日に逮捕したことについて、鹿児島県警の少年課では、こう説明する。
男性については、県警がサイバーパトロールをしていて、ファイル共有ソフトのうち「シェア」を使って、児童ポルノをネット上で公開していたのを見つけた。そして、捜査員が自宅を突き止めて踏み込むと、パソコン内に児童ポルノの動画2本を所持していたことが分かった。
そのときは、動画を公開している状態ではなかった。しかし、調べに対し、男性は公開目的で所持した容疑を認めているという。
このところ、児童ポルノ公開で摘発されるケースが全国的に相次いでいる。19日には群馬県警がオーストラリア人英会話教師(45)を、25日には長野県警がブラジル国籍派遣社員(48)をそれぞれ逮捕した。2人はともに、ファイル共有ソフトの1つ「イーミュール」を使っていた。
背景には、警察がサイバーパトロールを強化していることがあるらしい。男性を逮捕した鹿児島県警でも、10年は摘発件数が数件だったのが、11年は十数件になったほどだ。
しかし、全国の摘発例は、男性のように、ファイル共有ソフト使用による自動公開を知っていたと認めるものばかりではない。
自動公開知らなかったと否認する例もあるが…
2010年8月には愛知県警に逮捕された歯科医が、11年1月には千葉県警に逮捕された会社員がそれぞれ、「ダウンロード専用ソフトだと思った」などと容疑を否認するケースが出ている。
とはいえ、前出の男性を逮捕した鹿児島県警の少年課では、「ファイル共有ソフトはネットの知識が豊富な人がやっていますし、ダウンロードすれば公開状態になることを知っているはず」とみる。
コンピュータソフトウェア著作権協会の広報担当者も、こう言う。
「ソフトの種類によっては、すぐに公開されると盛んにPRされています。『知らなかった』という時代ではなく、ネットをしている人なら知っているものと考えています」
ネット上では、「知らないで使ってれば否認するわな」「ほかにやることあんだろ 警察」といった声から、「ダウンロード=アップのツールだろこういうのって」「言い訳なんかきくか」との指摘まで、様々な意見が出ている。
前出の著作権協会によると、最近は、摘発強化もあって、「ウィニー」「シェア」などの利用は減っているものの、初心者でも楽しめる「カボス」など各種ソフトが多く出回っている。著作権侵害のケースをみても、違法な利用を止める決定打はなく、警察の摘発や啓発活動など様々な方策で減らしていくしかないという。