「総合商社」というブランドは男子学生にとってよほど魅力的なものらしい。就職情報会社のダイヤモンド・ビッグアンドリード(D&L)が発表した「大学生が選んだ就職先人気企業ランキング2012」によると、文系男子の就職先人気ランキングで1位から3位までがすべて総合商社だった。
毎年文系の学生には根強い人気があるが、今回はベスト10内の半分が総合商社。これほどモテモテの理由はどこにあるのか。
ベスト10内の半分が総合商社
調査は2011年11月9日から12年1月22日まで、就職活動中の大学3年生と大学院1年生30000人(文系22000人、理系8000人)を対象に郵送と手渡しによるアンケート方式で実施され、7048人から回答を得た。2012年1月31日にまとめた結果は文系男子・女子、理系男子・女子の4項目に分かれており、この中で文系男子のランキングが1位三菱商事、2位住友商事、3位三井物産となっているのだ。5位には伊藤忠商事、7位には丸紅がランクインしていて、上位10企業中半分を総合商社が占めている。ちなみに4位は三菱東京UFJ銀行だった。
過去のランキングと比較すると、2010年は1位が三菱商事、2位が三菱東京UFJ銀行、3位が三井物産。ほか6位に伊藤忠商事、7位に丸紅が入っている。11年は1位三菱商事、2位三菱東京UFJ銀行までは変わらず、3位が住友商事だ。三井物産は6位、丸紅は8位につけている。
文系男子でなくとも総合商社への就職を希望している学生は多い。2012年のランキングで、理系男子では3位に三菱商事、5位に住友商事、8位に三井物産、10位に伊藤忠商事が。文系女子では6位に住友商事、10位に三井物産がランクインしている。理系女子だけはベスト10内に総合商社の名前はなく、明治グループ、ロッテ、森永製菓など、食品関連メーカーが人気のようだ。
選ばれる理由は結局「イメージ」?
総合商社が人気を集める理由とはいったい何だろうか。就職活動中の女子学生に話を聞いたところ、「海外の商品やお店などを日本に持って来たいという、気持ち、憧れがある」という。また、20代の男子学生は「漠然とでっかい仕事がしたい、日本を動かしたいという気持ちがある。若いうちから海外で働け、成長できる気がする。ただ、正直商社の仕事について細かく知っているわけではなく、イメージが先行している感は否めない」と話した。
大学ジャーナリストで「アホ大学のバカ学生」(光文社新書)の著者・石渡嶺司氏は、人気の理由を(1)取り扱う品目が多岐にわたり、仕事の幅が広そう(2)海外でも仕事ができそう(3)年収が高いという3つのイメージから来ると分析している。金融業界は堅実さでいまだ高い人気があるが、今後に不安を感じている学生も多い。メーカーは取り扱うものが個別の品目に限られ、仕事の幅が商社に比べて狭そうという理由から総合商社に遅れを取っているという。ただ、
「商社は本来食品や鉄鋼など個別の部門に配属されてしまえば、その後の移動はあまりないはず。結局扱う商品は限られてしまうので、イメージ先行という印象はぬぐえません」
とも指摘した。