ファッションブランド「コムデギャルソン」などで知られる世界的ファッションデザイナー、川久保玲さん(69)のロングインタビューが大きな反響を呼んでいる。川久保さんは、メディアへの露出がきわめて少ないことで知られている。
インタビューでは、名指しは避けたものの、蓮舫衆院議員が「2番じゃダメなんですか」と発言したことを批判し、「ファッションにはなお、人を前向きにさせて、何か新しいことに挑戦させるきっかけになる力があると信じています」と、フロントランナーとしての立ち位置を強調。この前向きな姿勢が共感を呼んでいるようだ。
6800回以上ツイートされる
川久保さんは1969年に「コムデギャルソン」を立ちあげ、75年には東京で初のショーを開き、81年にパリ・コレクションにデビュー。その黒ずくめのデザインは「カラス族」として日本でも流行した。今でも前衛的な新作を次々に発表しているが、めったに取材を受けることはないことでも知られている。
そんな川久保さんのインタビューは、2012年1月7日の朝日新聞朝刊の「オピニオン面」に「ファッションで前に進む」と題して掲載されたのに続いて、1月19日にはウェブサイトに掲載。ウェブに掲載されてから、急速に反響が広がっているのだ。具体的には、記事にあるツイートボタンから6800回以上ツイートされている上、フェースブック利用者に対して記事を推薦するためのボタンも3000回以上クリックされている。サイト上の他の記事に対するクリック数は大半が1桁で、多くても2桁。川久保さんのインタビューへの反響の大きさが分かる。
インタビューでは、
「最近はグループのタレントが多くなって、みんな同じような服を着て、歌って踊っています。私には不思議です」
「『2番じゃダメですか』と言い放った政治家がいました。けれども、結果は1番じゃなくても、少なくともその気持ちで臨まなければ。1番を目指すから世界のトップクラスにいることができる」
と、名指しこそ避けながらも、世の中のファッションが「安定感」や「着やすさ」を重視しがちな風潮を批判した。
「強気のふりも時には必要です。ふりでいいのです」
川久保さんをめぐっては、09年12月の朝日新聞のインタビューでも
「ジーンズ1本が何百円なんてありえない。どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服を着ていていいのか」
と、いわゆるファストファションに対する批判を展開して話題を呼んだが、今回も、
「いいものは人の手や時間、努力が必要なので、どうしても高くなってしまう。効率だけを求めていると、将来的にはいいものが作れなくなってしまいます」
と、同様の主張を展開した。さらに、
また、世間にたいする「反骨心」の源について聞かれると、
「世の中の不公平や不条理なことへの憤りでしょうか。本当は私だってそんなに強くはないですよ。ただ、強気のふりも時には必要です。ふりでいいのです。そうしないと前に進めないから」
と、意外な一面も見せている。ネット上の反響は、
「質問が全て後ろ向きで否定的だけど、答えはすべて前向きで肯定的」
「かっこ良すぎる」
といった、川久保さんの姿勢に共感するものが大半だ。