ツイッターの投稿が、内容によっては一部の国で閲覧できなくなるようだ。言論統制の厳しい国の政府から要請があった場合、運営側の手により投稿内容の掲載を「保留」することになる。
国際的に拡張を続けるツイッターにとって、言論の自由の考え方が違う国でもサービスを提供可能にするうえではやむを得ない措置だと説明する。これに対して利用者たちは「検閲だ」と猛反発している。
中国進出に備えた措置?
投稿内容の掲載保留措置について、ツイッター側は2012年1月26日の公式ブログで、「ドイツとフランスがナチス支持のコンテンツを禁じているように、歴史や文化的理由に基づいて特定の内容が厳しく制限される」国が存在する点に触れた。そのうえで、政府当局からの要請を受けて掲載を保留する場合も、該当する一部の地域にとどめて、それ以外の場所では閲覧できる処置を施すと発表した。該当ユーザーに「保留」した旨を知らせるとともに、投稿内容を丸ごと削除するのではなく、内容は閲覧できない代わりに「この投稿の開示を保留します」との文を添えて画面上に残すという。
この発表には利用者から反響が大きかったようで、翌27日には補足説明が公式ブログに掲載された。「画面上に投稿内容が表示される前に、運営側が検閲するのではないか」との質問に対して、「投稿数は4日間で10億に達するため、検閲は不可能かつ非現実的」とこれを否定。掲載を保留する場合は、あくまでも当局からの要請が合理的とツイッター側が判断し、法的にも適切だという場合に限ると繰り返した。
世界各国のメディアも、今回の発表を広く伝えている。米ワシントンポスト(電子版)は1月28日の記事で、「ツイッターが進出をもくろんでいる『言論統制国家』からの信用を得る手立てになるかもしれない」と評した。具体的には中国だという。「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度ランキング」最新版を見ると、中国はワースト6位で、イランやシリア、北朝鮮といった国々と大差ない。現在ツイッターは中国での利用が禁じられているが、ネット人口が5億人を数える国だけに、ツイッター側としても無視できない市場だろう。
一方で記事では、「検閲だ」と強く反発する利用者が「#TwitterBlackout」や「#TwitterCensored」といったハッシュタグをつくり、ツイッター上で抗議の意思を表していると報じた。
「アラブの春」活動家は怒りをあらわ
「#TwitterBlackout」のハッシュタグは、ツイッターの利用を中止してボイコットの意志表示をしようという呼びかけだ。日本語や英語で「今日は投稿しない」との書き込みが並ぶ。ほかにもフランス語や韓国語、アラビア語と世界各国から抗議の投稿が寄せられ、中には自分で書いた文の一部をわざと「伏せ字」のようにして、「検閲」を皮肉る利用者もいた。
ツイッターは、2010年12月以降にチュニジアやエジプト、リビアなどで起きた「アラブの春」と呼ばれる民主化運動で、反体制派が国際社会に情報を発信したり抗議行動への参加を呼び掛けたりした際の重要なツールとして活用された。だが今後、当局側が言論の自由を制限してツイッター側に「圧力」をかければ、「アラブの春」と同様の使い方はできなくなるかもしれない。
中東の放送局「アルジャジーラ」1月29日の番組には、エジプトの民主化運動に参加した男性が出演した。当時を振り返り、「ツイッターがある意味で自分の命を救ってくれた」と表現。「外出禁止令を破った罪で裁判にかけられるところだった」が、ツイッターのおかげで自分を救い出してくれた人が現れたと話す。デモでケガを負って治療が必要な人、弁護士を探している人など「ツイッターは『誰が何を必要としているか』を伝える手段だった」と説明した。それだけに、今回の措置にこの男性は「人権侵害と同じだ」と怒りをあらわにした。
ツイッター側は「投稿掲載を保留するケースを極力減らす努力を続けている。世界中の利用者の皆さまに、(投稿上の)規制が最も少ない形でご要望に沿える方法を見つけたいと考えている」と説明する。だが実際に「検閲」を受けた利用者が出始めると、騒ぎは大きくなるかもしれない。