客を呼べる大物スターがいなくなった?
1992年に栄一氏が82歳で死去した時には俳優の森繁久彌が「私は名古屋の方角を向いて『ギンギンギラギラ夕日が沈む』と大声で童謡を歌った」と別れを惜しんだエピソードも残っている。
栄胤社長は地元新聞のインタビューなどで「かつては歌舞伎公演以外に看板スターを10人そろえれば客が入った。今は1カ月間(の公演を通じて)客を呼べる大物ス ターがいなくなった」と業界の事情を嘆いている。「かつては劇場がスターを育てる余裕があった」というつぶやきもその通りだが、「かつての看板に頼り、構造改革に手をつけるのが遅すぎた」という業界通の指摘には耳が痛いだろう。
現段階で御園座が示した再建案は、老朽化が進む現在の御園座会館の建て替え。この間、大手住宅メーカーによる高層マンションへの建て替え計画 なども提案されているが、時期は未定のまま。そもそも肝心の資金の手当や、劇場自体の経営改善策は何も示されていない。
長谷川社長がこの苦境をどう乗り越えるのか。借入金の返済期限から逆算すれば、タイムリミットまでの残された時間は1カ月もない。