ドコモまた通信障害で揺らぐ信頼 スマホ売れれば負荷高まるジレンマ

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   NTTドコモの携帯電話サービスで2012年1月25日に起きた通信障害は、東京都心の利用者を直撃した。トラブルは半年で5度目を数え、このままでは利用者の信頼を失いかねない。

   ドコモはスマートフォン(スマホ)の販売に力を入れるが、データ通信量の多いスマホが皮肉にもネットワークを圧迫している。「iモード」との乗り入れも抱えて、さらなる設備増強は急務だ。

新型「パケット交換機」の処理能力が追いつかず

スマホのラインアップは拡充されているが
スマホのラインアップは拡充されているが

   最大252万人が影響を受けた25日朝の通信障害についてドコモは、「パケット交換機」の切り替えを原因に挙げた。メールをはじめとしたデータ通信を処理するパケット交換機を新型に替えたのだが、処理能力が追いつかなかったのだ。加えて通勤時間帯の朝9時ごろにJR山手線が事故でストップ、不運にもその影響とみられるトラフィックの増加が重なった。利用者が何度もメールを再送しようとしたり、インターネットにつなごうとしたりしてネットワークにますます負荷がかかった結果、ネットワーク側で自動規制がかかり、音声もデータ通信もつながりにくくなったと説明した。

   ドコモは1月26日に緊急会見を開き、岩崎文夫常務が「多大なご迷惑をおかけした」と謝罪。2月中旬までに全国のパケット交換機を総点検し、必要に応じて設備の増強を行うという。

   そもそも今回のパケット交換機の切り替えは、スマホ急増に対応するための措置だ。ドコモによると、スマホで「格安音声通話」アプリが人気を集めているが、この種のアプリは頻繁に「制御信号」を出すためパケット交換機を増強した。スマホは、操作していないときでもネットワークと自動的に通信することがある。ドコモが販売している米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」の搭載端末では、OSとパケット交換機の間で制御信号のやり取りは28分に1回程度だ。しかし、格安通話アプリを入れているスマホの場合、OSだけでなくアプリとも信号の送受信が行われ、その間隔も3~5分と短い。しかもアプリの数だけ通信も増える。このため新しく導入したパケット交換機が、想定を上回る制御信号の増加に耐えられなかったようだ。

10年に1度のネットワーク「世代交代」時期

   モバイル通信事情に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏は、スマホの急増にドコモの設備が追い付いていない点を指摘する。木暮氏によると、ネットワークの耐用年数はおよそ10年で、ドコモが3G回線によるサービスを始めたのが2001年10月。そのため、ここ1年ぐらいでネットワークの「世代交代」を進めているが、同時期にスマホが爆発的に普及しているため設備が増強しきれず、想定外のトラブルにつながっているのではないかと見る。

   今回を含めてドコモの通信トラブルは、半年間で5回だ。2011年12月20日には、スマホ向けサービス「spモード」で不具合が発生した。関西を中心に、利用者がメールを送信したところ、受信した相手には実際の送信者ではない全く別人のアドレスが表示されていたのだ。

   「spモード」は、従来型携帯電話のサービス「iモード」をスマホでも使えるようにしており、メールアドレスをそのまま使えるのが強みだ。「iモード」の契約数は4473万7100件で、「spモード」の697万1400件をはるかに上回る。スマホへの移行を進めるとはいえ、「iモード」の利用者がいまだ大きな割合を占める現状では、従来型サービスも併用できる仕組みを構築せざるをえなかったのだろう。結果、「複雑なシステムになってしまい、無理が生じている」と木暮氏も考える。アプリについても、ドコモが説明したような「格安通話」だけでなく、SNSや地図アプリなど自動的に通信するものは多いという。

   2011年度のスマホの販売計画についてドコモは、850万台を掲げる。だが売れれば売れるほどデータ通信量も増えるジレンマを抱える。2010年12月には次世代高速通信「LTE」のサービスを始め、対応端末も発売したが、「3Gサービスの『FOMA』が普及するまで2、3年かかったように、LTEが定着するまで少し時間がかかるだろう」と木暮氏。通信障害の不安を抱えながらも、スマホの販促を控えればライバルに差をつけられるのは間違いなく、ドコモにとって悩ましい状態が続きそうだ。

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