40年以上建設が止まっていた東京外郭環状道路(外環道)の練馬―世田谷区間(16キロ)がようやく動き出すことになった。
2012年度予算案に盛り込まれたもので、首都高の混雑緩和や大震災対策への効果への期待の一方、採算性への疑問や環境への悪影響を懸念する声も消えない。
1メートルつくるのに8000万円かかる
外環道の都内区間は、関越道、中央道、東名高速を直結させ、都心を横切る車を迂回させるのが大きな狙い。40メートル以上の大深度地下トンネルを通す計画で、高速道路会社と国・自治体が費用を分担する「合併施行方式」で、事業費は約1兆2800億円を見込む。2012年度予算案に「大都市圏環状道路整備事業」(総額1237億円)の一部として盛り込まれた。今年度中に準備工事を完了し、来年度に用地買収(約300億円)と並行して立て坑工事(約100億円)に着手(東京都が4分の1の約100億円を負担)。2013年度までに用地を買収し、2014年に本工事に着工したい考え。東京都が2020年夏季五輪の招致を目指していることから、そこが完成のめどになる。
1メートル造るのに8000万円かかる「世界一高い道路」ともいわれる外環道とあって、各方面の議論は活発。特に、東日本大震災を受けて防災面で注目され、大震災復興構想会議で議長代理を務めた御厨貴東大教授が、「東日本大震災の例のように縦軸と横軸とのつながりができないとすると、これは救援活動の重大な支障となることは明らかだ」と警鐘を鳴らして、外環道早期整備の必要性を訴えた(2011年11月18日付読売新聞)。これに呼応し、猪瀬直樹都副知事はネットの自身のコラム(2011年12月13日)で、東京23区の交通量のうち14%は東京に用のない通過交通であるとの数字を挙げるとともに、防災面で「首都直下型地震が起きれば、……首都圏への西からのアクセスは関越道、中央道、東名しかないが、この放射道路は相互につながっていない。……災害時には縦軸となる道路の存在が復旧の命運を分ける」と訴えた。