橋下徹・大阪市長が、自身が代表を務める「大阪維新の会」の国政進出に強い意欲を見せている。「衆院選に300人擁立し、200議席をめざす」とマスコミに話す維新の会幹部もいる。
橋下市長は、公約である大阪都構想実現に向け国に制度改正を求めている。維新の会の「本格的国政進出」の動きについて、「改正実現を国会議員に迫るための脅しに過ぎない」との指摘がある一方、「橋下市長の狙いは最初から国政進出。本音が現れた」とみる向きもある。
「いよいよ国を動かしていこうじゃありませんか」
橋下市長は2012年1月23日、維新の会による衆院選候補擁立準備について、「調子に乗るなよとなったら、もう終わり。国政政党にお任せするのが大原則だ」と記者団に述べた。
慎重な発言の一方で、「国での議論がうまくいかなくなったときに備え、最低限の準備はしておく」と釘を刺すことも忘れなかった。
橋下市長は1月20日には、「大阪都構想はゴールではない。いよいよ国を動かしていこうじゃありませんか」と、自身の後援会パーティーで述べた。この発言を受け、「次期衆院選での候補擁立に強い意欲を示した」(読売新聞ネット版)などと報じられている。
橋下市長は、自身が当選したダブル(府知事・大阪市長)選の際から、「国会議員に協力要請し、協力がなければ国政進出」との方針を示していた。しかし、この段階では「近畿圏70人」擁立を示唆する程度だった。
それが今回、維新の会幹部発言から「衆院で200議席確保」を目指す方針と報道された。大阪都構想や道州制に賛成するみんなの党や公明党、自民党の一部と合わせ、衆院過半数(240議席)を目指すというものだ。「近畿圏」どころか、比例代表も含め「全国的に打って出る」形だ。
橋下氏の狙いは首相公選制?
「200議席なんて夢物語」と切り捨て、「単なる脅し」とみる自民党関係者もいる。衆院の自民・無所属会派は現在、120議席だ。衆院選に立候補する際には、候補1人にかかる選挙資金は最低でも1000万円とも2000万円とも言われる。維新の会にそこまでの資金力はまだあるまい、というわけだ。
「脅しが早速、効いた」との声も出ている。橋下市長と1月24日に会談した民主党の前原誠司・政調会長は、大阪都構想に慎重な考えを示していた姿勢を一転し、「説明を受けると(民主党の方向と)一緒だと思った」と政策協議を進める考えを示した。とは言え、民主党内には橋下市長との連携に慎重な声が根強くある。
一方、「国政進出は当初からの狙いだ」との指摘もある。現在、大阪都構想を実現する関連法案をみんなの党などが提出する構えで、橋下市長の説明通りなら法案の行く末を見極めた上での国政進出議論になるはずだが、維新の会幹部の中からは「法案の成否にかかわらず(次期衆院選に)擁立する」(21日、読売新聞など)との声も出ている。
幹部発言通りなら、「『国への協力要請がダメなら…』は建前で、国政進出は既定路線」と受け取れる。
橋下市長個人の国政進出については、本人も周囲も否定している。「否定をそのまま信じることはできない」という懐疑論や、「橋下氏の狙いは、首相公選制導入後の首相への立候補。国会議員には興味はない」との見立てなどが渦巻いている。