福岡出張の楽しみが残った――福岡市の屋台の「一代限り」規制について、見直す方向で市の第3者委員会が一致したとの報道が流れると、ツイッター上ではこんな「つぶやき」も現れた。
「一代限り」規制が続けば、いずれ屋台が消えてしまうという指摘があるため、「安堵」の声が出た形だ。「屋台大国」福岡市には、155軒の屋台があるが、最近10年ほどで40軒も急減している。
鳥越俊太郎氏「(一代限り規制)考え直すべきだ」
「(一代限り規制は)屋台をいずれなくすという意味を含んでおり、考え直すべきだ」。2012年1月20日、福岡市の第3者委員会「屋台との共生のあり方研究会」の会長でジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、こう指摘した。鳥越氏は福岡県出身でもある。
1月20日には第5回の研究会会合があり、前回までの議論をまとめる形で、鳥越会長が、「一代限り」規制を見直す方向で次回から議論を詰めていく方針を示した。
衛生面など問題も指摘されているが、「屋台の公益性」が確認されたことを受けたものだという。
福岡市の屋台は、繁華街の天神や長浜、中州地区が3大エリアで、場所によっては十数軒がずらりと並んでいる。「日本というよりアジアだ」と感想をもらす観光客らも少なくない。ピーク時(1965年前後)は400軒を超えていたが、今では半分以下に減っている。
「一代限り」規制とは言え、実は「屋台営業で主な生計を立てている」配偶者や「直系血族の子」は権利を継承できる。結果的に「孫」にも継承可能だ。しかし、「弟子に店を継がせる」などはできないし、子どもでも「屋台営業で主な生計を立てている」条件が満たされなければダメだ。高いハードルには違いない。
第3者委では今後、新規参入の是非も含めて話し合いを進めていく。
「ほかの街にはない、独特の雰囲気」
福岡市の屋台の減少傾向について、市民はどうみているのだろうか。市がまとめたアンケート(2011年9月実施)によると、「今すぐ減少を食い止める必要がある」8.6%、「今すぐには食い止めなくてもよいが、将来的に消滅することは望ましくない」57.2%だ。「存続派」が多数といって良さそうだ。
一方、「将来的に消滅してもよい」は12.6%だった。
福岡市への観光客に対するアンケート(同)もある。屋台の「今後の存続」については、「残してほしい」72.0%、「廃止してよい」4.2%、「どちらでもよい」20.9%だった。こちらも「存続派」が多い。
ネット上では、「一代限り」規制見直しの方向性について、歓迎する声もある一方、「汚いし、臭いし、通行の邪魔」といった「見直し反対論」も少なからず並んでいる。
福岡市の第3者委員会は、3月をめどに意見をまとめ、高島宗一郎市長に提言する予定だ。
総務省から福岡市の通称「屋台課長」として出向中の臼井智彦企画課長(27)に話を聞いた。茨城県出身の臼井課長は、赴任後に「福岡屋台デビュー」を果たしたのだそうだ。
「(福岡の屋台街には)ほかの街にはない、独特の雰囲気があります。膝をつき合わせて飲食できるのは屋台ならではです」
と魅力を語る一方、
「(屋台が)道路を塞いでいる、などの課題がたくさん指摘されてもおり、(第3者委の)提言を受けた上で、問題解決と『屋台の良いところを生かしていく道』の両立を模索したい」
と話した。