米国自動車市場で、韓国の「ヒュンダイ」(現代自動車)の人気が高まっている。米調査会社のJDパワー&アソシエイツ社がまとめた「2012年 ブランド再購入率調査」で初のトップ、つまり「もう1度買いたいクルマ」に選ばれたのだ。
主力の「ソナタ」や「エラントラ」が好調で、2011年の新車販売台数でも日産自動車を抜いて6位に浮上した。日本勢はトヨタ自動車が3位、ホンダが5位だったが、いずれも前年割れと「失速」した。
ホンダに迫るヒュンダイ
東日本大震災とタイの大洪水に伴う生産への影響を受けたとはいえ、2011年の米新車販売台数で日本勢はまったく冴えなかった。
米調査会社のオートデータがまとめた2011年の米新車販売台数によると、全体の販売台数が前年比10.3%増の1277万8171台だった。2年連続で前年を上回ったなかで、トヨタはシェア3位を維持したものの、前年比6.7%減の約164万台と4年連続のマイナス。ホンダは6.8%減の約115万台と2年ぶりの前年割れとなり、米クライスラーに抜かれて5位に後退した。
日産自動車は14.7%増の104万台と健闘。それでも、「ヒュンダイ」の勢いには負けた。
ヒュンダイは傘下の起亜自動車も含めた11年11月末時点の販売台数で、米国で初めて100万台の大台を突破。年間では前年比26.5%増の約113万台、シェア8.9%を確保し、6位となった。5位のホンダにも2万台弱の差に肉薄している。
伊藤忠経済研究所の丸山義正・主任研究員は、「日本車の一人負け」と指摘する。シェア1位の米ゼネラル・モーターズ(GM)が13.2%増の約250万台となるなど、フォード・モーターやクライスラーも含めて米国勢も、いずれも前年比2ケタ増の大幅な伸びを確保したのだから、その指摘もうなずける。
日本勢の「失速」について、丸山氏は「トヨタの大規模リコールで日本車の安全神話が崩れ、その影響が残っているところに東日本大震災が起こったことが大きい。さらに、円高が加わったことがあります」と話している。
「最近は品質でも日本車を脅かす存在に成長した」
米JDパワー&アソシエイツの「2012年 ブランド再購入率調査」は今年で9回目。11年に米国で新車に買い替えた顧客を対象に、2月から9月にかけて調査を行い、7万3733人から回答を得た。
それによると、ヒュンダイのリピート率は前回から4ポイント増え、64%。2位のフォードとホンダ(いずれも60%)を抑えてトップに立った。「エラントラ」と「ソナタ」が好調で、女性のリピーターも少なくない。
ヒュンダイは、ウォン安を背景にした低価格を「売りもの」に販売を伸ばしてきた。これにゼロ金利や失業した際に購入した新車を返却できるプログラムなどが好評で、リピーターの獲得にもつながっているようだ。
また、「最近は品質でも日本車を脅かす存在に成長した」と、伊藤忠経済研究所の丸山氏はいう。日本勢はハイブリッドカーのような環境技術で先行しているが、「米国の消費者は必ずしも燃費のよさなどで購入を決めているわけではありません。価格と品質のバランスから、ヒュンダイが選ばれています」と話す。
どうやら日本勢の劣勢は否めないようだが、ヒュンダイの攻勢は2012年も続くのだろうか――。
「震災の影響が薄れてきたので、日本車の盛り返しには期待したいです。それでも、ヒュンダイのシェアは確実に上がるでしょうね」
丸山氏はこうみている。