(ゆいっこ花巻;増子義久)
「着のみ着のままで投げ出されたけれど、この指先だけは忘れないでちゃんと覚えていてくれた。多くの犠牲と引き換えにいただいた命。大切にしなくては…」 ―16日、花巻市内に居を移した沿岸被災者約40人で作る「手わざの会」(佐々木睦子会長)が人形作りに挑戦した。昨年9月、「ゆいっこ花巻」の呼びかけで会を立ち上げて以来、月に1回程度の割合で小物作りになどを手がけてきた。
福島県南相馬市出身の泉田ゆきいさん(67)は昨年暮れのクリスマスリース作りに次いで2回目の参加。自宅は福島第1原発からわずか13キロの警戒区域内。昨年4月、娘さんの嫁ぎ先である花巻市に家族4人で転居した。「津波と原発の二重被害で帰るメドも立たない。幸い、自宅は無事だったが、近くの集落では70戸の家が跡形もなく流され、63人が犠牲になった。毎日が絶望の日々だったが、この会の存在を知り、救われた気持ちになった」と泉田さん。
全員が和裁や洋裁を趣味とする人たちで、これまでにエプロンやブローチ、リース、針刺し、鍋帽子など様々な創作品に工夫を重ねてきた。こんな活動ぶりを伝え聞いた熊本県のNPO法人から同県のPRマスコットキャラクターで、昨年度の「ゆるキャラグランプリ」に輝いた「くまモン」の関連グッズ制作の依頼が舞い込んだ。大槌町出身の佐々木会長は「これまでの活動を将来的には自立を目指す副業にしたい。また、くまモンに負けない、被災地の復興をイメージするキャラクターも考案したい」と張り切っている。
当初は「ゆいっこ花巻」のスタッフが材料の布地を持ち寄っていたが、最近、花巻市石鳥谷町の縫製工場や閉店した洋装店などからも大量の材料提供があり、「手わざの会」としては起業化も視野に入れた取り組みも検討している。
ゆいっこ
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