欧州債務危機などによる株式の売買低迷のあおりを受けて、証券大手だけでなく、ネット証券各社の苦戦も浮き彫りになっている。各社ともあの手この手の挽回策を練るが、今年も限られたパイをめぐる競争が激化することは避けられない情勢だ。
「我々も苦しいのは確かだけどね、業界再編が具体化するのは ネット証券じゃないかと思っているよ」
売買代金合計は前年比4%減
ある大手証券会社幹部はこう語る。赤字のオンパレードとなっている大手証券各社は、2011年秋から、メガバンクとの経営統合が取りざたされることも少なくないが、その陰でネット証券の苦しさも際立っているとの指摘だ。
実際市場は縮んでいる。SBI、楽天、マネックス、松井、カブドットコムの大手5社の2011年1年間の株式の売買代金合計は、前年比4%減の約83兆2700億円。前年割れは5年連続だ。11年は前半よりも欧州債務危機が深刻化した後半の方が市況は厳しく、後半は各社とも売買代金が前年同期比で1割程度の減少で推移したようだ。証券大手のような規模の従業員がいない分、黒字は確保しているが、じり貧には違いない。
ネット証券の顧客の主体は個人投資家。海外の機関投資家のように欧州の国債の損失や、米国の規制強化の動きに翻弄されているわけではないが、東京市場の株価低迷と値動きの鈍さで投資意欲をそがれているようだ。
値動きの鈍さについては実際、東証1部の1日の売買代金が1兆円を下回るのが日常風景になった11年末ごろから、日経平均株価の1日の高値と安値の差が数十円程度にとどまる日も珍しくない。ネット証券の主要な顧客である「デイトレーダー」は長期保有と いうより、1日の値動きの変動を利用して利ザヤを抜くことを目指し、1日のうちに取引を手仕舞う人が多い。株価の変動が乏しければ利益を得る(損失を被るリスクもあるが)うまみも少ないことから、「株離れ」が進んでいる可能性がある。
このため何とか個人投資家をつなぎとめようと各社とも対応に 追われている。