2012年1月18日はひょっとして歴史に残る日になるかもしれない。グーグルやオンライン百科事典「ウィキペディア」(英語版)をはじめとして何千という米ウェブサイトが同日、米議会が審議中のオンライン海賊行為防止法案に反対して抗議行動を起こしたからだ。
ウィキペディアは、水曜日午前12時から24時間のサービス停止に踏み切った。英語版のサイト(http://en.wikipedia.org)では、ブラックアウト(停電および報道管制)を象徴するようにトップページが黒く塗られ、白字で「Imagine a World Without Free Knowledge」と書かれている。その下に次のようなメッセージがある。
グーグルのロゴは黒い四角で隠された
「われわれは過去10年以上にわたり、何百万時間を費やして人類史上最大の百科辞典を編纂してきた。現在、米議会はフリーでオープンなインターネットに致命的な打撃を与えかねない法案を審議中だ。(国民の)意識を高めるために、ウィキペディアを24時間閉鎖することにした」。
そして最後にジップコード(郵便番号)欄が空欄になっている。読者の番号を記入すると、その選挙区を代表する上院議員と下院議員の電話番号とメールアドレスが表示されているページが現れる。水曜日午後1時の時点で400万人以上が国会議員の連絡先をチェックしたという(ウィキペディアの発表)。
ある国会議員の秘書は、「1時間に100件以上のメールが殺到し、反響の大きさにびっくりした」と語っている。
グーグルはサービス停止まで踏み込まなかったが、トップページでお馴染みのロゴは黒い四角で隠され、クリックすると、「上院と下院の両法案は、インターネットの検閲を助長し、国内での経済成長を抑制することになるので、何百万人もの国民が反対している」というメッセージのページに飛ぶ。その右横に法案反対の署名コーナーがあり、姓名、ジップコードそしてメールアドレスを記入すれば、グーグルが集めた署名を議会に提出するという。
すべてのリンクを監視することが求められる
現在下院で審議中の法案は「オンライン海賊行為防止法案」(SOPA) と呼ばれ、海外のウェブサイトによる米企業の知的財産権の盗用を防ぐことを目的にしている。例えば、ウィキペディアやグーグルなどがリンクを張る外国のサイトのなかで、映画、テレビ番組、音楽などを無断で違法コピーするサイトがあれば、リンクを解除する義務が生じる。もし見落としたりすれば、ウィキペディアなどが処罰対象になるので、各サイトは膨大な労力を使ってすべてのリンクを監視することが求められるわけだ。ウィキペディアやグーグルは、悪質サイトを締め出す手段として検閲ではなく、より賢明な技術的な解決策があると主張している。
ちなみに、同様の法案―「知的財産権保護法案」(PIPA)― が上院にも提出されている。
今年は選挙の年でもあるので、議員は有権者の動向にとりわけ神経質になっている。オンライン抗議運動に賛同が集まるなかで、法案への支持をひるがえす議員が続出しているようだ。PIPAの起草者のひとりであったルビオ上院議員(フロリダ州選出)はさっそく支持を取り消した。同様にSOPAの支持者であったクェイル下院議員(アリゾナ州選出)も起草者のリストから脱落することを表明している。(在米ジャーナリスト 石川幸憲)