エネルギー政策を巡って、夏に向けていくつもの山が次々に訪れる。東京電力の一時国有化と発送電分離を柱とする電力改革に電気料金の値上げが絡み、その根底では原発の扱いを含むエネルギー基本計画の抜本見直し作業も進むという重層構造だ。いずれも難しい議論で、簡単に決着するのは難しいとみられる。
2011年末、政府の「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」は、電力制度を抜本的に改革するための論点をまとめた。電力会社が発電と送電を一体運営して、小売りもほぼ独占している状態を見直すもので、最終的に、夏にまとめる新しいエネルギー政策に反映させる段取りだ。
2013年3月期に債務超過になる可能性が高い
焦点の発送電分離については、現在の発電と送電の会計分離のさらなる徹底のほか、①発電と送電部門の資本関係を認めない「所有分離」②持ち株会社の下に発電や送配電部門を別会社として置く「法的分離」③会社は一体のまま、送配電部門の運用を非営利の外部機関が担う「機能分離」――の3類型を示した。
今後、有識者会議を設けて議論を本格化させるが、経済産業省は発電、送電、小売りなど事業別の免許制を導入し、発電と小売りの競争を促し、送電については電力会社から独立した外部機関に委ねる「機能分離」を軸に検討する考えとされる。
むろん、どの類型であれ、「分離」に電力会社の反発は強い。そこでポイントになるのが東電の一時国有化問題だ。枝野幸男経済産業相は11年末、論点をまとめると同時に、東電に公的資金の注入(資本注入)を通告したのも、国主導で経営改革を進め、電力制度の改革進めようという狙いだ
。資本注入は原発事故の巨額の賠償はもちろん、廃炉などの費用負担を考えれば、避けて通れないところ。東電は原発の火力発電による代替で燃料費の負担増が年間8000億円を上回り、2012年3月 期連結決算で6000億円規模の最終赤字に陥る見込みで、廃炉、除染費用などが膨らむ2013年3月期に債務超過になる可能性が高いからだ。