現代美術家、村上隆さん(49)の「クール・ジャパン」に対する発言がネットで波紋を広げている。
「クール・ジャパン」とは、ゲーム・漫画・アニメなど日本独自のポップカルチャーを指す言葉で、海外で高い評価を受けている動きを指す。村上さんは、2012年1月17日の朝日新聞に掲載されたロングインタビューで、「『クール・ジャパン』なんて外国では誰も言っていません。うそ、流言です」と、一刀両断したのだ。
到底ビジネスのレベルではない
村上さんは、アニメ、フィギュアなどオタク的な題材を用いた作品で知られる現代美術家で、海外でフィギュアが約16億円で落札されるなど、日本だけでなく海外での評価も極めて高い。代表作として、ルイ・ヴィトンとのコラボレーション作品に使われたキャラクター「お花」など、ポップで愛らしいキャラクターがあるが、その一方で「オタク文化を利用し商売している」と、長年、日本のオタク層からは批判を受けてきた。
インタビュー内で村上さんは、
「『クール・ジャパン』なんて外国では誰も言っていません」
「日本人が自尊心を満たすために勝手にでっち上げているだけ。広告会社の公的資金の受け皿としてのキャッチコピーに過ぎない」
「少しずつ海外で理解され始めてはいますが、ごく一部のマニアにとどまり、到底ビジネスのレベルに達していない」
と、自身が思う海外における日本文化の現状を伝えた。
そのうえで、「僕は村上隆という一人の芸術家として海外で注目されているのであって、クール・ジャパンとは何の関係もない」と答えたのだ。
日本の現状は「ぬるい」
この発言に対し、ネットは早々に「炎上」した。
「クール・ジャパンが虚構だという意見には賛成だが、お前が言うな」
「こいつの作品も『日本ありき』だと、誰だってすぐに分かる」
「まさかの発言www」
「ならオメーのガラクタの異常な高値はなんなんだよw 」
など、もともと「犬猿の仲」だったオタク含め、ネット住民から非難が殺到した。
朝日のインタビューは、美術界の厳しい批判者としても知られる村上さんに、東日本大震災以降の芸術と社会の関わりなどについて聞いたもの。
村上さんは「3・11を経て、以前のように楽して生きられない時代になった・・・行動を起こすときだと思います」ときっぱり。大震災後の日本をテーマにいま全長100メートルの「五百羅漢図」を製作中であることを明かした。そして、サブカルチャーやオタク文化は「平和な日常」から生まれてきた「あだ花のような文化」であり、日本の現状を「ぬるい」と指弾したのだ。
日本を代表する現代美術家の思い切った発言だけに、
「本当にクールジャパンを世界に売り出したかったら、村上隆みたいに相手の懐に入って積極的に売り込む姿勢が無いとダメ」
「村上本人が海外でウケる物をしっかり調べて作って成功してるのに対して、クールジャパンは広告戦略だけでどうにかしようとしてる」
と、村上さんのスタンスを擁護する声も上がっている。