局部切断の変死体で見つかった東京都昭島市のタクシー運転手男性(49)について、警視庁は自殺の可能性もあるとみている模様だ。薬物反応が出たとの報道も一部であった。しかし、それでもナゾが多いというのだ。
今回の変死体には猟奇性があるだけに、2012年1月18日もワイドショーが大きく取り上げた。
覚せい剤反応が出たと一部で報道
中でも焦点になったのが、タクシー運転手男性の自殺説だ。
フジテレビ系「とくダネ!」によると、遺体の第一発見者である職場の上司は、現場の状況から、「自殺ではないな」との直感を語った。それは、男性の首が切られていたのは仮に自殺行為からだとしても、手を万歳した姿で発見されたのは不自然だからだという。職場の同僚も、それまでの男性の勤務態度から、自殺は「まったく想像がつかない」と漏らした。
元東京都監察医務院長の上野正彦さんも番組内で、「普通、局部を切っているのは他殺ですよね」と指摘した。致命傷にならないところを切っているのは、考えにくいからだそうだ。他殺として有名なケースには、殺した女性が局部を持ち歩いた戦前の「阿部定事件」がある。
しかし、上野さんは、現場や傷の状態から、警察は自殺の線が強いと感じているのではないかと指摘した。男性には、抵抗したときにできる防御創がなく、返り血を浴びて逃げた跡が見当たらないと報じられているからだ。
さらに、手がかりになるかもしれない、新たな情報が出てきた。フジ系ニュースは17日夜、男性への簡易検査で、体内から覚せい剤の陽性反応が出たと報じた。正式な鑑定ではないというので誤検出の可能性は残っているが、薬物による錯乱状態になって異常な自傷行為に出ることはありうるのか。
「覚せい剤による自傷行為は聞かない」
薬物中毒に詳しい長崎大学の高橋正克教授(中枢薬理学)は、覚せい剤による影響については否定的だ。
「『神から命令を受けた』などと、一般的に危害を加えることはあるとされています。体内に薬が残るほどの常習者なら、服用時に幻覚、妄想が出た可能性はあります。しかし、そうだとしても、自傷行為というのはあまり聞いたことがありません。攻撃的になることはあっても、自分自身への攻撃を命令するというのは、あまり考えられませんね」
ただ、建物の高さを認識できずに、平地と同じと考え、飛び降りて死亡するようなことはあるという。また、コカインの常習者なら、皮膚の下に虫がいるとの幻覚が出て、虫を取り出そうとナイフで切ってしまうことはよく知られているともした。
もちろん、警視庁は他殺の可能性も視野に入れて捜査しているようだ。
タクシー運転手男性は、度々自宅に来ていた交際中の中年女性と、物を投げ合うなどの大ゲンカをしており、警察も女性から事情を聞いているとも報じられている。とはいえ、女性が関与している証拠などは指摘されておらず、自殺なのか事件なのか、ナゾは深まるばかりだ。