郵便社員が年賀状「自腹購入」 厳しい販売ノルマが原因か

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   郵便事業会社の社員らが年賀状を自腹で購入し、金券ショップに売っていると週刊誌などが報じた。会社側は「把握していない」というが、一部労組は認めており、厳しいノルマが原因だとしている。

   週刊誌では、プレイボーイの2012年1月16日発売号が「自腹購入」の実態を報じた。

メディアで繰り返し報じられる

   記事によると、ある20代の契約社員男性は、年賀状の販売ノルマを課せられ、さばき切れずに1000枚を都内の金券ショップに持ち込んだ。50円のはがきで、買い取り価格は43円だったため、7000円の自腹を切ったことになる。

   この男性は、ノルマをこなさないと給料が格段に高い正社員になれないためと、その事情を説明した。自腹購入は、会社のコンプライアンス違反になるため、会社には「親戚に売った」と報告したという。

   記事では、郵便事業会社では、正社員に約1万枚、非正規社員には約5000枚のノルマがあるとした。うち自腹のケースは「自爆営業」と呼ばれ、正社員もこなさないと減給になるため必死に自爆するとの一部労組の証言を紹介している。

   社員らが年賀状を金券ショップに売っている実態は、ニュースサイト「リアルライブ」の6日付記事でも書いている。それによると、正社員は少なくとも1000枚以上、非正規社員は500枚以上もノルマを課せられているという。

   こうした実態は、新聞などでも過去に度々取り上げられている。11年の年賀状でも、郵便事業会社の横浜支店が「年賀状を販売しないと時給にひびく」などと迫って非正規社員が1000枚以上を自腹購入したと朝日新聞が10年12月3日に報じていた。実際、暑中見舞いのノルマをこなせなかった非正規社員が時給を10円減らされていたとも指摘している。

   自爆営業については、08年2月には衆院総務委員会でも取り上げられている。

   郵便事業会社は、この問題にどんな認識を持っているのか。

200枚が9200円で売られていた

   これに対し、郵便事業会社の広報室では、「当社としては把握していない」と実態を認めなかった。過去にも「自腹購入」などの報告は受けていないという。

「直接的なペナルティを課すノルマはなく、あくまで販売上の目標です。それも、達成しないと不利益を被ることがないようにやっています。目標は、事業財務上に必要があるので定めており、やみくもに売れということではありません」

   横浜支店のケースについては、言葉が過ぎたことは認めながらも、時給カットは、ノルマをこなさなかったからではなく、それも含めた全体評価の結果だったとしている。

   連合系で最も大きな「日本郵政グループ労組」の書記長も、取材に対し、自爆営業について「ないですね。ないと思っています」と答えた。相談例もなく確認できないといい、「過去の話ではないですか」と話した。「現場では、昨年末から販売上の目標を与えていませんよ。年賀状は普通に売れるので、それをきちっとやらせているということです」

   一方、プレイボーイ記事中の労組とは別の全労連系「郵政産業労働組合」では、今でも実態があることを書記次長が認めた。

「東京の支店なら、正社員1人7000枚、非正規社員は2000枚などと聞きます。全員が全員ではありませんが、ノルマから金券ショップやネットで年賀状を売ったりする人もいます。近畿地方のテレビでは、金券ショップに帯で巻いた新品の年賀状がたくさん積まれている映像も見ました」

   実際、年賀状を金券ショップで買ったという人は少なくない。東京・千代田区内の金券ショップでは昨年末、200枚で9200円のセットがいくつも積まれていた。正価より800円も安い。自爆営業について、会社側と連合系組合は認めないが、大量に出回っていることは事実だ。「二重価格」が広がれば、正価で購入した消費者からも疑問が出てくる可能性がある。

   全労連系労組は、自爆営業についてがなくならないとすれば、中途半端な民営化のツケが回っていると可能性があると見る。電子メールの普及などで年賀状を書く人は年々減っている中、営利企業にもかかわらず思い切った戦略転換などができないからだ。国会での郵政関連法案の審議も、政局優先から遅々として進まず、自爆営業の懸念が払拭できるめどは立たないままだ。

姉妹サイト