救命ボート錆ついて使えない! 大パニック「まるでタイタニック事故」

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   イタリア中部の沖合にあるジリオ島付近で、大型客船「コスタ・コンコルディア」が座礁、少なくとも6人の犠牲者が出た。ちょうど100年前に起きた「タイタニック号」の沈没事故を思い起こさせる悲劇となってしまった。

   乗客からは、事故後に避難を促す船内放送がなかったと対応の遅れに不満が出た。座礁の原因は、本来通るはずのない「島寄り」ルートを航行したためとみられる。

船内放送「落ち着いて行動を」だけで避難を促さず

人気の客船だったコスタ・コンコルディア
人気の客船だったコスタ・コンコルディア
「まるでタイタニック」

   コスタ・コンコルディアの事故を伝えた2012年1月16日朝のワイドショー番組は、判で押したように同じタイトルが並んだ。1912年、航行中に氷山に衝突して沈没、1513人が犠牲となったタイタニック号の海難事故に重ねるように、今回の事故を取り上げたのだ。

   乗客の話によると、夕食中に突然船が何かにぶつかったような大きな衝撃を感じ、直後に船内の照明が消えて真っ暗になったという。乗客・乗員は4200人という巨大な客船。テレビ番組のひとつは、暗い船内にひしめく人たちが、怒号や悲鳴が飛び交う中で我先に救命ボートに乗ろうと、半ばパニック状態になっている映像を紹介した。動画投稿サイト「ユーチューブ」には、救命ボートで避難する人が撮影したと見られる映像がアップされていた。ボートから撮られたのは、夜の暗闇の下で横倒しになった大型客船。その後大勢が避難した岸で、家族の名前を大声で叫びながら探す撮影者の様子も映し出されていた。

   「衝撃」は、船がジリオ島沖の浅瀬に乗り上げて座礁したためだ。しかし日本人乗客のひとりは、「発電機の故障で電気系統に問題が発生したが、すぐ復旧するので落ち着いて行動してください」との船内放送があったものの、避難の必要性は一切知らされなかったと明かす。外国人の乗客も「船はコントロールされているから心配ない、としかアナウンスしていなかった」と当時を振り返った。事故の発生は正確に伝えられていなかったようだ。

   しかし実際は、船内に海水が流入する深刻な事態になりつつあったのだ。別の日本人客は、船室に乗員がやってきて「急いで」と救命胴衣の装着を手伝ってくれ、そこで初めて「大変なことになっている」と気付いたという。

   情報が不足するなか、逃げようとする乗客。ただでさえ混乱状態なのに、救命ボートが錆ついて使えないものがあったとの証言も出た。これが事実なら、非常時への備えが不十分との批判は免れないだろう。

「カジュアルクラス」として人気のツアー

   この客船を運航するコスタ・クロチエレ社は1月15日に声明を発表。事故原因について同社は、「フランチェスコ・スケッティーノ船長による重大な人為的ミスの可能性がある」と発表した。今回の航路が「沿岸に近づきすぎた」ために事故につながったとの見方を示している。船長は事故発生後、多くの乗客が船内に残されているにもかかわらず早々に船を放棄して逃げ出した疑いもあり、地元検察当局に拘束されて取り調べを受けている。

   コスタ・クロチエレ社のクルーズ船ツアーは、日本でも人気が高い。同社の日本正規代理店、クルーズプラネット社に取材すると、「コスタ・コンコルディアは豪華客船というよりはカジュアルクラスで、気軽にクルーズを楽しめる点で支持されています」と説明する。同社が扱ったツアーは日本と現地の往復航空運賃やホテル宿泊費、クルーズ費用すべてが含まれ、全行程11日間で18万3000円からとなっており、必ずしも高額とは言い切れない。客層も、いわゆる「アクティブシニア」が多いが、富裕層よりは時間的な余裕のある人が多いようだ。今回も、乗客のうち43人は日本人だった。

   安全面の配慮はどうか。クルーズプラネット社によると、乗務員は2週間に1回、事故対応の訓練を受けており、必要な資格も持っているという。またツアーでは、船が出港してから24時間以内に必ず全乗客を対象にした「避難訓練」が実施される。船内に訓練用のアナウンスが流れ、全員が救命胴衣を着けてデッキに集合するのだ。ところが、今回は航海初日の夕食時に事故が起きている。不運にも訓練が行われる前だった可能性もある。

   乗客の証言では、救命ボートが定員オーバーになることもあり、「海に飛び込んで泳いでいる人もいた」ようだ。いまだに行方が分からない人もおり、捜索が進められている。

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