2月14日のバレンタインデーが近づき、小売店やメーカーのバレンタイン商戦が本格化しつつある。消費全般は低迷傾向にあるが、「2012年のバレンタインは意外と好調になるかもしれない」(菓子メーカー)との見方が強い。
東日本大震災を機に、人と人との絆が見直される中、「家族や身近な人に感謝の気持ちを伝えたい」という思いの広がりが背景にあるようだ。
「本命」より「義理チョコ」志向
江崎グリコが11年12月上旬、インターネット上で800人を対象に実施したアンケート調査によると、今年のバレンタインチョコの予算は約3698円で、去年より120円程度増える見通しという。
アンケートでは、約9割が「バレンタインチョコで家族に日頃の感謝の気持ちを伝えるのはよいこと」と回答。震災後の気持ちの変化を尋ねる質問に対しては、「人とのつながりを意識するようになった」が約8割、「家族との絆が強まった」も7割弱に上り、震災で家族や周囲の人の大切さを改めて感じた人たちが、バレンタインチョコを活用したい、という姿が浮かび上がる。
プランタン銀座が昨年12月下旬、メールマガジン会員約3万3000人を対象に実施したオンラインアンケート調査では、「義理チョコを用意する」という回答が前年比6ポイント増の70%になった。「本命チョコを用意する」が同4ポイント減の69%だったのに比べ、義理チョコへの意欲が大きくなっている。プランタン銀座は「震災を経て、いろいろな人と関わっている自分の存在を実感し、周りの大切な人たちにチョコを贈りたいとの決意がみてとれる」と分析する。
チョコで被災地支援の動きも
そんなバレンタイン事情を受け、各社とも「人とのつながり」や「感謝」などを重視し、積極的な販売展開に乗り出す方針だ。江崎グリコは「今年のバレンタインは、友人や家族など大切な人に想(おも)いを伝える〝絆記念日〟」と呼びかけ、市販のチョコに独自のアレンジを加えて贈る「デコチョコ」などをPR。プランタン銀座も本番1か月前の1月中旬からバレンタインフェアを始め、バリエーション豊富なチョコをそろえる。
一方、バレンタインチョコで被災地支援をしようという動きも出ている。NGO団体「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM―NET)」は、福島とイラクの子どもたちを助ける「チョコ募金」への協力を呼びかけている。JIM―NETは2004年から、米軍による劣化ウラン弾の影響でがんにかかったとみられるイラクの子どもを支援しており、東京電力福島第1原発の事故後は、福島にも援助の輪を拡大。4缶1セットのチョコを販売し、1缶(500円)のうち300円をイラク支援、50円を福島の子どもを放射能から守る活動に充てる。
「今年は例年になく、ふれあいや感謝に包まれた心温まるバレンタインデーになりそう」(メーカー)との期待が高まっている。