中国のバーで酒を酌み交わしたこともある
「現代コリア」の佐藤勝巳主筆に五味氏の人物像を聞いてみた。
「彼みたいに(金)ファミリーの1人、正男氏に食い込んだ記者は他にいない。といっても、『特ダネを取るぞ』とギラギラした人ではなく、物静かなタイプですよ」
五味氏本人とも連絡を取ることができた。正男氏との出会いは偶然で、途中中断した時期もあったが、これまでに延べ約150通のメールを互いにやりとりしているそうだ。単独インタビューをしただけでなく、中国のバーで酒を酌み交わしたこともある。
「金正男さんですか?」「そうです」。2004年9月、北京の空港で日本人取材陣数人と正男氏とそっくりな男性との間で、韓国・朝鮮語を使ってこんなやりとりがあった。日本取材陣は、日朝実務者協議の取材の関係で空港にいて、男性を見かけて声をかけたのだ。この「数人」の中に五味氏もいた。
その場で記者らは名刺をこの男性に渡すと、数か月後に男性からあいさつ程度のメール(表記はハングル)が各記者に届いた。当時、「正男氏を名乗る人物」という表現で、空港でのやりとりやメールの件を朝日新聞などが報じた。この男性の映像を専門家に見せて「ほくろの位置などから正男氏に間違いない」といった見解も報道された。
その後、五味氏と正男氏とのハングルのメールでのやりとりは、数年間も「音沙汰なし」が続いたり、「3日に1度」のペースで頻繁になったりして続いた。「数人の記者」と横並びで始まった正男氏とのメールのやりとりが、なぜ五味氏だけ「深化」していったのだろうか。