オウム事件について、毎日新聞が一部誤報していると弁護士がブログで指摘した。これに対し、毎日は記事を訂正せず、弁護士の主張を「続報」の形で記事にしていたことが分かった。
一部誤報が指摘されたのは、毎日新聞の2012年1月11日付夕刊記事だ。
容疑者の衣類は捨てたのではなく任意提出
記事では、元オウム真理教信者の斎藤明美容疑者(49)について、警視庁が前日夜に東大阪市の自宅を家宅捜索したところ、かくまった平田信容疑者(46)が着ていた男性用の衣類や靴がなかったと報じた。そのうえで、平田容疑者がいた痕跡を消すため、出頭前にこれらを捨てたと警視庁がみているとしている。
また、捜索で偽名の健康保険証を押収したが、斎藤容疑者の携帯電話は見つかっていないとした。そして、交友関係を隠すために処分した可能性もあるとして警視庁が追及していると書いた。
これに対し、斎藤容疑者の弁護人をしている滝本太郎弁護士は、自らのブログで12日、「一部が誤報」と毎日新聞に反論した。
それによると、平田容疑者の男性用衣類は、斎藤容疑者が自首するときに証拠として任意提出した。また、健康保険証も携帯電話も提出したとして、警察に追及されていないと反発している。隠したりする意図はなく、平田容疑者の失効した免許証なども提出済みというのだ。
滝本弁護士は、毎日からは取材がなかったと不満を述べており、11日中に毎日側に訂正を求めたという。ブログでは、「報道でイメージが作られ、その相互作用により、無理な起訴がどれほどにあったか、考えないといけない」などと訴えている。
毎日新聞社の社長室広報担当は12日、取材に対し、滝本弁護士の主張についてこう釈明した。
メディアが情報操作されることに懸念示す
「11日付の記事は、捜査当局への取材に基づき原稿を作成しました。夕刊の締め切り時間の関係で、滝本弁護士への取材はできませんでした。11日午後の滝本弁護士への取材で、捜査当局の説明と食い違う主張がありましたので、本日の朝刊で記事にしています」
そこで2012年1月12日付朝刊をみると、記事は訂正せず、続報の形で事実上修正されていた。そこでは、滝本太郎弁護士の話として、斎藤明美容疑者が自首のときに、自らの携帯電話や平田信容疑者の衣類などを任意提出したと報じている。
滝本弁護士は、12日のブログでさらに、「類似の記事は他にもあるようです。実に、警察の誰かが適当な情報を、まあ思わせぶりに出しているのでしょう」とメディアが情報操作されることへの懸念を示す。過去のブログでも、警察の情報操作に躍らされるメディアの実情を暴いており、これに対抗するため、弁護側ももっと積極的にメディア対応をすべきだと訴えている。