ドコモ首位の立役者は「PS Vita」 ゲーム機でも「携帯電話契約」の不思議

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   携帯電話の契約数から解約数を引いた「純増数」の順位に異変が起きた。長らく首位の座にいたソフトバンクモバイル(SBM)が陥落し、変わってNTTドコモが21か月ぶりにトップに立ったのだ。

   原動力のひとつは、携帯電話機ではない。ドコモの3G回線を利用するゲーム機「プレイステーション・ヴィータ(PS Vita)」が大きく貢献したのだ。

ドコモの3G回線使ってゲーム

「PS Vita」は3G回線でゲームを楽しめる
「PS Vita」は3G回線でゲームを楽しめる

   電気通信事業者協会(TCA)の2012年1月11日の発表によると、ドコモの2011年12月の純増数は42万9900件で、前月の11万1600件から4倍近い大幅増を記録した。SBMは2位に後退したものの37万7300件で、前月の31万2000件から増加、3位のKDDIも前月比でほぼ倍増となる29万4300件となり、3社とも好調に推移した。

   年末商戦の効果が考えられるが、それにしてもドコモの増加数は際立っている。ドコモ広報にその理由をたずねると、次世代高速通信規格「LTE」によるデータ通信サービスや、LTE対応のスマートフォンが発売されたことを挙げた。あわせて、2011年12月17日に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の新型ゲーム機「PS Vita」も、好結果の要因のひとつだと認めた。

   PS Vitaは、インターネットに接続してオンラインゲームを楽しめる。3G回線につなげるモデルもあるが、この回線はドコモのものを利用する仕組みだ。3G回線を使うにはドコモと契約しなければならず、利用者は一定時間分の通信が可能な「プリペイドプラン」か、スマートフォンのように時間制限のない「定額データプラン」を選べる。

   SCEは2012年1月10日、PS Vitaが発売3週間で累計50万台の実売を記録したと発表した。この数字は日本だけでなく香港や台湾も含まれる。一方、ゲーム雑誌の出版を手掛けるエンターブレインは2011年12月20日、PS Vitaが国内での発売日から2日間で、推定販売台数が32万1407台に達したとの集計値を公表した。いずれも、「3Gモデル」がどのぐらいの割合かが不明だが、大ざっぱな見方をすれば十万台単位でドコモの純増数に貢献したと考えられなくもない。

減り続けていた「プリペイド契約」が激増

   裏付けとなりそうなのが、TCAが発表している「プリペイド契約」の純増数だ。ドコモの場合、2011年1月以降、毎月1600~1700件の「純減」となっており、11月末時点の累計は8400件まで落ち込んでいた。ところが12月だけで19万1800件と急増。この月の純増数が42万9900件なので、プリペイド契約が4割以上を占める計算だ。ドコモ広報部は、このうち「PS Vita」がどの程度含まれるかは明かさなかったが、ほぼ1年間ずっと「右肩下がり」で減少していたプリペイド契約がいきなり20万件近く増えたことを考えると、「PS Vita」が相当数を占めるのではないか。

   純増数の順位では、長期にわたってSBMが「目の上のたんこぶ」となっていたドコモは、今回の首位奪還で多少なりとも溜飲を下げたことだろう。しかし、「PS Vita」の貢献度が高ければ高いほど、今回の結果は、純粋な「携帯電話機の純増」ではない点が浮き彫りになるのは皮肉だ。

   その点を意識したのか、「イー・モバイル」ブランドで携帯電話サービスを提供するイー・アクセスは、TCAを通じた毎月の携帯電話契約者数の公表を取りやめた。1月11日の発表資料では、モバイル通信が音声中心からデータ通信への比重が高まり、「電気通信事業者の事業形態もこれに伴い変化」していると指摘した。ドコモのように、電話機として通話ができない通信端末が今後、「携帯電話」として契約者の増減を左右していきそうだ。

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