日本企業の海外企業買収意欲が強まる一方だ。2011年は件数、金額とも過去最高を更新した。 少子高齢化で国内市場が低迷するなか、1ドル=70円台後半に定着した円高や世界的な株安が後押しし、海外に活路を求める動きが加速している。リーマン・ショック後に一時しぼんだ海外企業買収だが、「新興国を中心に今年も活発になる」(国内証券大手)と の見方が強い。
米調査会社トムソン・ロイターによると2011年の件数は過去最高だった前年から19.4%増の634件。金額は80.1%増の690億4400万ドル。金額もこれまで最高だった2008年の675億2600万ドルを上回り、過去最高を更新した。
「麻雀業界」と揶揄される ビールは典型
ただ、円建てで見ると2011年は5兆5118億円で、過去最高の2008年(6兆9935億円)に次ぐ高さ。この間に進行した円高ドル安が影響したものだが、 「過去最大級」には違いない。
海外企業を買収する業種としては、やはり薬品、食品といった内需型産業の意欲が高い。
ビール業界はその典型と言える。キリン、アサヒ、サントリー、サッポロの大手4社が国内市場のパイを奪いあうことから、これまで「麻雀業界」と揶揄されることもあった が、だんだんシャレにならなくなっている。2011年のビール系飲料市場は前年同期比で3%程度減少する見通し。この結果、国内市場規模は1992年に現行の統計を取り始めて以来、過去最低に落ち込むのは確実。今後も上昇は見込みづらく、活路を海外市場に求めざるを得ない状況だ。
このため過去10年ほど各社はM&Aに積極的で、11年もアサヒがニュージーランドの酒類大手、インディペンデント・リカーを約1000億円かけて買収。キリンも11月、ブラジル2位のビール事業会社「スキンカリオール」の5割弱の株式を約1000億円で追加取得し、完全子会社化すると発表した。