サイバーエージェントがこのほど設立したスマートフォン向けアプリ開発の子会社「シロク」の社長に、2012年4月に入社予定の大卒内定者を抜てきした。
社長になった飯塚勇太氏ら4人の取締役は学生時代に共同で、写真共有サービスを提供するアプリ「My365」を開発。この事業をサイバーエージェントが譲り受け、法人化した。
インターンシップ通じて知り合い
サイバーエージェントは「シロク」を、資本金5000万円で2011年12月1日に設立。iPhoneのカメラで撮影した写真をソーシャルネットワークサービス(SNS)上に載せられる、写真共有サービスのアプリ「My365」のサービスの運営を、12年1月20日から開始する。
この新会社の社長に就任したのが飯塚勇太氏、21歳。現在はまだ慶応大学の4年生だ。「My365」の開発者の一人とはいえ、入社前の新卒内定者が社長に就任したのは、新規事業の経営に若手社員を抜てきしてきたサイバーエージェントといえども初めてのことだ。
「My365」は、11年10月にサービスの提供を開始した。「なにげない毎日は、振り返ると素敵な思い出でした」というコンセプトのもと、1日1枚、自身にとって印象的な瞬間を写真に収めてアップロードし、カレンダーとして残すというサービス内容が受けて、クチコミで広がりダウンロード数を伸ばしている。
日本のみならず、タイや香港などでも人気で、アクセスの約3割がアジアを中心とした海外ユーザー。これまでのダウンロードは約30万回にのぼるという。
スマートフォンの普及で人気が高まっている写真共有サービスは、最近では大手SNSのGREEが女性向け写真共有サービス「Snapeee」(マインドバレット社)と提携するなど、注目の分野でもある。
サイバーエージェントによると、飯塚氏らインターンシップで知り合った学生が中心となってつくったアプリが「My365」で、「(アプリが)非常にユニークだったため、法人化して任せてみることにしました」と話す。
とはいえ、飯塚氏らは他の内定者と同様に、きちんと採用試験を突破して内定をもらっていた。ちなみに、12年春にサイバーエージェントに入社する新入社員は約210人の予定だ。
経営者も「やってみて育つ」もの
サイバーエージェントではこれまで、若手社員が新規事業を立ち上げて子会社の社長に就くケースはあった。
たとえば、mixiアプリプラットフォーム向けソーシャルアプリ事業を展開する子会社「グレンジ」の木下慎也社長は入社後2年でモバイル事業の「CyberX」の取締役に就任、4年で同社の社長に就いた。2010年7月に設立したスマートフォン向けアプリケーション事業の「アプリボット」には当時、入社してわずか2か月の卜部宏樹氏が取締役を任され、話題になった。
同社は、「とくに起業家志望を採用する方針などがあるわけではありません。ただ、新卒者の中には経営への意欲が強い人がいたり、過去にそういった若手に新規事業を任せて業績を伸ばしているケースもあります。経営者も、実際にやってみて『育つ』ところがありますから」と説明する。
IT事業は初期投資が少なくて済むこともあり、「うまくいかない場合は早期に見直すこともありますが、若手に任せることへの不安はありませんね」と話す。