今年の正月のテレビCMは、エコカーの燃費競争が激しかった。ダイハツが「ミライース」でリッター当たり30キロ(JC08モード)をアピールすれば、スズキは「アルトエコ」で「ガソリン車ナンバーワンの低燃費」と、30.2キロを強調。ダイハツ、スズキとも年末年始に集中してスポット広告を流し、軽乗用車の「第3のエコカー」はCMでも一騎打ちを演じた。
さらにトヨタは昨年12月末に発売したコンパクトクラスのハイブリッドカー(HV)、「アクア」の燃費(35.4キロ)を「世界トップ」と宣伝しており、2012年はエコカーの燃費競争が激化しそうだ。
リッター60キロ台のプリウスPHVも発売へ
アクアはトヨタが「量産ハイブリッドカー開発17年の知恵と技術を結集し、世界トップの燃費と、エントリー価格169万円を実現した」と語ることからもわかるように、プリウスの弟分に当たる普及HVモデルだ。プリウス同様のHVシステムだが、コンパクトなボディーを利してJC08モードでリッター35.4キロ、従来の10・15モードでは40.0キロの低燃費を誇る。
トヨタはアクアの月間販売目標を1万2000台としているが、「昨年12月末の発売時点で6万台の受注があり、納車まで4カ月待ち」の人気という。安価で燃費が良い小型HVの潜在的な需要は高く、プリウスを上回るヒットとなるのは間違いない。
さらにトヨタは、家庭用電源などから充電できるプラグインハイブリッドカー(PHV)の「プリウスPHV」の受注を既に開始しており、1月30日に発売する。こちらはハイブリッドカーながら、満充電状態で電気自動車(EV)として26.4キロ走行できる。
トヨタは「EV走行とHVとして走行する燃費を複合して算定したプラグインハイブリッド燃料消費率(PHV燃費)はリッター当たり61.0キロ」と公表している。このリッター当たり60キロ台という低燃費は、第3のエコカーはもちろん、HVでも太刀打ちできない領域だ。
プリウスPHVはリチウムイオン電池を採用しているものの、販売価格は320万円から。トヨタは年間の販売目標を3万5000台から4万台と低く見積もっているが、先行するアクアとともに、この分野でトヨタの優位性は揺るぎそうにない。
ホンダの次の一手に注目
そうなると、今年気になるのはホンダの動きだ。トヨタアクアのライバルは、ホンダではフィットハイブリッドとなるが、同じHVでも、こちらの燃費は26.0キロ(JC08モード)にとどまる。ホンダはフィットハイブリッドの燃費を30.0キロ(10・15モード)と宣伝しているので、注意が必要だ。
ホンダは今夏、フィットのEVをリース販売するほか、軽でもダイハツやスズキに次ぎ、リッター30キロを越える「第3のエコカー」を発売するのは確実とみられる。日本の自動車メーカーの中でも、スピード感をもった商品開発がホンダの身上だ。国内で小型車のHVを市販しているのはトヨタとホンダだけで、HVでもアクアに対抗するホンダの次の一打が注目される。