「いつもつながっていたい」 若い世代が生んだスマホ大ブーム
(連載「スマートフォン革命」最終回/韓国スマホ事情2)

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   韓国におけるモバイル通信はこれまで、通話以外では電話番号を使ってのショートメッセージの交換が主で、インターネット接続はポピュラーでなかった。日本のように、NTTドコモの「iモード」に代表される携帯でのネット利用とは事情が違っていた。

   そこに、簡単にネットにつながるスマートフォン(スマホ)が登場し、わずか2年で飛躍的に広まった。韓国・西江(ソガン)大学経営大学院で経営情報システムが専門の金龍辰(キム・ヨンジン)教授は、スマホの「使い勝手」が韓国人の気質とマッチしているのではないかと考える。

韓国人は「新しいもの好き」「テクノロジー好き」

西江大学経営大学院の金龍辰教授
西江大学経営大学院の金龍辰教授

――スマホの流行は、韓国社会にどのような影響を与えたでしょう。

 2009年の時点で、韓国のスマホ所有者数は約47万人でした。それが2011年になると、11月までで2000万人に到達しています。いかに急激にスマホが普及したか、お分かりいただけるでしょうか。
   韓国人は概して「新しいもの好き」「テクノロジー好き」な面があります。そのうえ、「早く、早く」と何事もスピードを重視する特性もあります。後述しますが、韓国ではブロードバンドによる高速のネット接続を拡充してきましたから、いつでもどこでもネットにつながるスマホというツールは、韓国人の気質にピッタリ合ったのではないでしょうか。
   政府や社会も、スマホの普及を後押ししているようです。大手企業の最高経営責任者(CEO)は役員にスマホを渡してマスターするように指示し、また会社によっては社員全員に配布しています。政府の情報通信技術委員会のメンバーからは以前、米アップルのアイフォーン(iPhone)を奨励するような発言まで飛び出しました。政府関係者が特定の外国製品を推薦したと批判を浴びましたが、国レベルで「スマホブーム」に乗っていたという好例だと思います。

――スマホの使い方で、特徴的な点はどこですか。

 若い世代では以前から、テキストでのショートメッセージが盛んでした。「いつもつながっていたい」という感情が、スマホの普及でさらに顕著になったと言えます。「カカオトーク」というアプリは典型例で、1対1でのやり取りしかできないショートメッセージに代わって、いつでも複数の知人とテキスト交換ができる点で「つながり」の欲求を満たしています。
   もうひとつはSNSです。フェイスブックやツイッターは、サービス開始するとすぐ、爆発的な人気を得ました。そこに、SNSと親和性の高いスマホが出たことで、今ではSNSにどっぷりとつかる若者も見られます。

――フェイスブックは実名登録が原則です。韓国のユーザーは個人情報の公開にどれほど抵抗感を持っていますか。

 韓国でも個人情報保護法が2011年9月30日に施行され、ネット上におけるプライバシー問題の関心も高まっています。しかし本名でネットサービスに登録したり、電話番号やメールアドレスを開示したりすることをちゅうちょする人は、少数派と言えるでしょう。
   これは韓国の歴史が関係していると思います。軍政から脱却して民主化が進む過程で、人々は恐れることなく自分の意見をハッキリ口にするようになりました。自由にモノを言えない時代を抜け出したことで、誰もが「話したい」「私の考えを聞いてほしい」との傾向が強まったのです。その気質が受け継がれ、今日ではツイッターやフェイスブック、カカオトークを通して積極的に自分の話をするようになっているのだと思います。
   もうひとつは、世代ごとに存在する結びつきの強さが挙げられます。同じ学校に通っていたクラスメートをはじめ、自分が所属していた集団や組織の仲間に対しては、連帯感を持ち続けています。同じ時間を共有した「仲間」を探そうと、SNSで本人の名前を検索し、旧交を温めるというわけです。
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