エコカー補助金の復活で自動車業界は国内販売の盛り上がりに期待をかけている。日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は「(4月以降の延長が決まったエコカー減税と合わせて)需要を100万台増やしたい」と表明し、超円高が続き、輸出採算が悪化するなか母国市場の販売増による生産の底支えに強い期待を示した。
エコカー補助金については販売会社にも「助かる」との声がある一方、「ありがた迷惑」と否定的な意見もある。いずれにせよ、クルマの売り手も買い手も補助金が気になる1年になりそうだ。
思わぬ追い風を受け、一気に挽回?
燃費基準を達成したエコカーの購入者に対する補助金は総額3千億円の予算が組まれ、2011年12月20日以降に登録された新車に適用される。乗用車の場合、排気量660cc以上の登録車は10万円、同以下の軽自動車は7万円が補助される。期間は2013年2月末までで、それより早く消化すればその時点で終了になる。
前回のエコカー補助金が2010年9月に打ち切られて以来、1年3カ月ぶりの「復活」に新車ディーラーの声は様々だ。あるディーラーは「こんなチャンスをもらえるのはラッキーだ。ぜひ前向きに活かしていきたい」と話す。2011年の新車市場は東日本大震災、台風、タイの洪水と自然災害によるクルマやカーナビの供給ストップが相次ぎ、落ち着いて販売に精を出す余裕がなかった。補助金復活という思わぬ追い風を受け、一気に挽回したいという思いがにじむ。
「過重な税負担を下げてもらったほうが産業振興になるのに」
一方で、急に出てきたエコカー補助金に違和感を受けたディーラーも少なくない。「正直言うとありがた迷惑な話。一過性の補助金を出すより、自動車にかかる過重な税負担を下げてもらったほうが産業振興になるのに」と話す。別のディーラーは「3千億のうち、トヨタさんが半分くらい持っていくんだろうな。まあ、日本経済にとって重要なメーカーなのは確かだが」と苦笑いする。
自動車業界はクルマの購入時にかかる自動車取得税と車検時に納める自動車重量税の廃止を求めていたが、2012年度税制改正では重量税の上乗せ分の一部である1500億円の削減にとどまった。政府は恒久的な税収減になる減税はごく一部にとどめ、一時的な出費で済む補助金を持ちだして円高に苦しむ自動車業界の支援を図った格好だ。
補助金の対象の基準は割合緩い
補助金の対象となるエコカーの条件は2015年度燃費基準達成ないし2010年度燃費基準25%超過達成と割合緩い。ハイブリッド車や電気自動車、リッター30キロクラスのガソリン低燃費車だけでなく、一般的なガソリン車も入る見込み。
ただ、対象車種が少ないメーカーは、基準に合わせる開発に追われるだろう。なかには装備を追加して車重を重くし、燃費基準が低いクラスに上級移行して補助金対象とする奇策もあるうる。
ディーラーは目先の販売増を狙いながらも、消費増税が現実のものとして迫るなか、どれだけ消費者の財布のひもを弛める効果があるか。また、打ち切り後の需要の反動減がどう出るかを気にしている。