「無駄な対策」に10年で200億円 BSE全頭検査ついに見直し

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欧米では「科学的根拠」から実施せず

   全頭検査は、獣医師らが牛の脳の一部を取り出し、試薬を加えてBSEの原因である異常プリオンがあるかどうかを調べる。しかし異常プリオンは脳の中にだけあるわけではなく、体内に吸収されると移動し、脊髄や目、腸の一部などにもあると確認されている。

   さらに、実際には牛が高齢になればなるほど脳に集まる傾向にあるといい、「若い牛の脳を検査しても、感染牛の一部が見つかるにすぎない」というのが多くの専門家の見方だ。感染牛が大量確認された欧米で全頭検査が実施されていないのは、こうした科学的論拠によっている。

   そんな全頭検査が日本で10年も続いてきたのは、科学的論拠ではなく、政治的判断や感情論が大きな背景にあったといえる。全頭検査に踏み切った当時の坂口力厚労相は「風評被害があり、(全頭検査をしなければ)国民の安心が得られない」と説明している。

   全頭検査では約200億円の税金が使われた。すべてが無駄だったとは言えないが、論拠が薄い以上、見直しは当然というのが厚労省の立場。東京電力福島第1原発の事故で、食品の放射能汚染への関心が高まっている。

   国民の食の安全を保つには何が本当に必要なのか、BSEの全頭検査問題が「安全」と「安心」のもつれた糸を解きほぐす糸口になるか、注目される。

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