2008年にはラミレス、グライシンガー、クルーン獲得
巨人は「日本一になること」が至上命令とされている。リーグ優勝では負けたのも同然、ということである。昨年まで2シーズン続けて日本一を逃し、今年も勝てないと3年連続となるので巨人にとっては一大事。それでなくとも、ここ2年間は親会社と同じマスメディア球団の中日に後れをとっている。
過去、巨人はピンチになると大金をつぎ込んで他球団の主力を獲得し、それで急場をしのぐ戦術をとってきた。それが顕著になったのは長嶋茂雄監督時代。中日の4番だった落合博満(前中日監督)を獲得して1994年に日本一。西武のやはり4番清原和博を取って2000年と原監督になった02年にも日本シリーズ優勝と実績を残した。
落合には在籍3年間で10億円以上を支払い、清原にも最高4億円の年俸を払っている。大金イコール日本一を証明した。この長嶋監督の補強は、「おねだり補強」と揶揄された。
最も派手な補強は07年から08年にかけて。07年には日本ハムから小笠原道大、翌年にはヤクルトからアレックス・ラミレス外野手とセス・グライシンガー投手、横浜からマーク・クルーン投手を手中にした。彼らの契約がすごかった。
▽ラミレス=2年10億円
▽グライシンガー=2年5億円(前年年俸4000万円)
▽クルーン=1年で契約金5000万円、年俸3億円
この結果、08年にはラミレス打点王、グライシンガー最多勝利、クルーン最多セーブでリーグ優勝、09年には日本一に。「30億円補強」などといわれ、他球団が指をくわえて見ていたのがこの頃である。
ただし、この大物選手たちは、力が衰えると必ず放出される。落合は日本ハムへ、清原はオリックスへ。昨年オフにはラミレスが横浜DeNAに移った。この辺は実にドライである。
このほか、ヤクルトのロベルト・ペタジーニ、近鉄のタフィ・ローズといった外国人の本塁打王やダイエーの左腕工藤公康らも獲得している。投資効率はともかく、チーム強化の情熱、プライドはたいしたものである。たとえ「巨人の負けない病」の処方箋と言われても、だ。