「赤字」でも新規上場OK 東証、「基準緩和」で活力アップめざす

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   東京証券取引所は2012年3月をメドに、東証1部と2部の上場を目指す企業に対する審査の基準を緩和する。もともと門戸が広い新興・ベンチャー企業向けの「東証マザーズ」ではなく、1部・2部の基準を緩和する。

   未上場で実力派の中堅・中小企業にできるだけリスクマネーを供給し、既存産業を活性化させるのが狙いだ。これだけ大がかりな改正は初めてだそうだが、ただ、地盤沈下の目立つ東証自身の活性化でもある。

上場審査の基準を見直す

「日本経済において重要な役割を果たしている中堅・中小企業の技術開発や海外展開などの取り組みを支援し、こうした企業群の活性化を図りたい」

   東証の斉藤惇社長は基準緩和を発表した2011年12月20日の記者会見でこう強調した。

   これまでの東証の上場ルールは右肩上がりの経済成長を前提に作られた。しかし、成熟経済の日本は低成長経済でもある。こうした環境変化を受けて、「企業の継続性や収益性」などに着目する上場審査の内容を見直すとともに、手続きをスピーディーに進める方針を示し、上場へのハードルをできるだけ低くしたい考えだ。

   具体的な見直し内容で、最も大きな変化は「赤字でもOK」だと思われる。厳格な利益基準を設けていないマザーズではこれまでも「高い成長可能性」が認められれば赤字でもOKだったが、1部・2部はそうもいかなかった。今回、東証は1部・2部について決算の利益関係は次のように変更する。

   これまで経常利益と当期純利益の両方ともが、①2期前1億円以上で直前期4億円以上、②3期前1億円以上で直前期4億円以上、さらに3年間合計6億円以上――の①②いずれかを満たす必要があった。これを新基準は対象利益を経常利益のみとし、金額は「2年間の総額で5億円以上」にする。

   この結果、経常利益は順調でも一時的な「特別損失」の発生などにより当期赤字になってしまった会社がOKになるばかりでなく、上場の直前期に短期的な業績悪化で経常赤字となった場合でも2年間合計で5億円以上の経常黒字ならOK――という具合にかなり緩和されることになる。

   さらに従来はこの利益基準を満たさなくても、時価総額が1000億円以上あればOKだったが、今回の見直しでこれを「500億円以上」に半減させる。最近の市場環境の悪化も踏まえて緩和するという。

審査もスピードアップ

   このほか、「企業の継続性」については「上場前後で見通しが良好である」から「上場後に安定的に利益を計上できる」に変更。足元が減益傾向でもいいことにして、短期的な業績にとらわれないことを前面に打ち出す。

   また、2部などを経ず直接1部に上場する際は時価総額は500億円以上が必要だが、これも250億円以上に半減。また、上場申請を受け付けた後の審査期間についても「3カ月以内に完了するよう努める」と示し、迅速な審査を図る。

   ただ、既存産業を支援といっても、これは東証自身の強化策でもある。新規上場数は底打ちの兆しは見られるとはいえ、東証以外も含め今年は37社で、2007年まで9年続けて100社を超えていたことを考えればまだまだ少ない。これに対する危機感の表れでもある。

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