福島第1原発事故を受け、ジャーナリストの田原総一朗さんが30年以上前に出した2冊の原発関連本が再び注目を集め、復刊された。当時の取材を通じ、「原子力発電は危険な代物である」と痛感したという田原さんが今、「『脱原発』は60年安保に似ている」と警鐘を鳴らしている。
反対の考えを持つ人たちの意見も聞くことが必要
――原発に関する世論調査で、例えば朝日新聞(2011年12月13日付の朝刊)では、「段階的に減らし、将来は、やめることに賛成ですか。反対ですか」との質問に対し、賛成が77%、反対が16%という結果が出ています。「脱原発」を望む声が多い現状について、どう受け止めていますか。
田原 今の世論調査の例で言えば、「将来は…」という漠然とした質問であり、原発をやめる年限を区切っているわけではないので、いろいろな意見があっていいと思っています。
例えば、「20年後に」などと年限を区切って「原発を全廃すべきか」という質問なら、現実的な数字を挙げて可能なのか不可能なのかを議論しなければなりません。もっとも、今の状況では、これから少なくとも10年、20年先までは原発の新設は無理です。
――改革派官僚として知られ、2011年秋に経済産業省を辞めた古賀茂明さんと田原さんとの最近の対談本「決別!日本の病根」(アスコム)などで、田原さんは、「脱原発」や「反原発」について、「60年安保に似ている」「一国平和主義だ」と指摘されています。
田原 まず、私は決して原発推進派ではありません。そもそも、これから10年、20年は原発新設はできないのですから推進しようがない。以前に原発の本(復刊した「原子力戦争」と「ドキュメント東京電力」)を書いたときに、原発は危険だと思ったし、今でもそう思っています。
しかし、「脱原発」を唱えるだけで、代替エネルギーの真剣な議論や事故原因の検証などもしようとしない姿勢で突き進むのは、ある意味怖いことです。「危険だからだめ」の一点張りではなく、自分たちと反対の考えをもっている人たちの意見も聞き、議論することが必要なのです。
議論や検証をしようとせずに、また、国際情勢に目を向けようとしない姿勢は、かつての一国平和主義や60年安保を連想させます。
60年安保は、私も当時、毎日のようにデモに参加しました。実は日米安全保障条約の「改善」だったのですが、当時は条約の中身を検討するようなこともせず、感情的に、当時の岸信介首相が日本を戦争に引きずり込むために安保条約を改悪しようとしている、と思い込んでいました。