ストーカー被害を警察に相談していたのに、家族2人が殺害された。「『黙って殺されろ』と(警察から)言われたのと同じ」。長崎県西海市で起きたストーカー殺人事件の遺族は、警察への不信を訴えている。
被害相談を受けた警察の怠慢な対応が問題視され、ストーカー規制法ができるきっかけとなった桶川ストーカー事件(埼玉県、1999年)などへの反省から、警察は「変わった」はずではなかったのか。犯罪被害者の支援関係者からは失望や驚きの声も上がっている。
「警察からは(容疑者に)『手を出すな』と言われた」
西海市2女性殺害事件で妻と母を亡くした自営業、山下誠さん(58)は2011年12月27日、事件発生までの経緯や心境を書いた文書を報道陣に寄せた。
山下さんの3女(23)がストーカー被害にあっており、この「ストーカー」、無職筒井郷太容疑者(27)=三重県桑名市=が2人を殺害したとして長崎県警に逮捕された。交際に反対する家族を逆恨みしたとみられている。
山下さんは文書で、千葉県警から被害届を出すのを「1週間待ってほしい」と言われたことや、「警察からは(容疑者に)『手を出すな』と言われたが、『黙って殺されろ』と言われたのと同じ」と訴えている。
山下さんの文書などによると、事件の経緯は次のようなものだ。
10月末、山下さんは長崎県警を通じ、3女が住む地区を担当する千葉県警習志野署に通報した。ネットで知り合った容疑者が3女宅に押しかけ、監禁状態にしていることを知ったからだ。
10月30日、習志野署員らは現場へ向かい、容疑者を傷害の疑いで任意同行した。逮捕はせず、「3女には近付かない」と誓約書を書かせるにとどめた。
しかし、容疑者はその後、3女の友人らに「3女の居場所を教えないと殺す」と脅迫メールを送った。