経済が悪化しても消費税を上げるのか 「景気弾力条項」めぐり、ギリギリの駆け引き

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   政府が年内をメドに取りまとめを目指す社会保障・税一体改革の素案で、経済情勢が悪化した場合、消費税率引き上げを停止する「景気弾力条項」が焦点のひとつになってきた。

   政府税制調査会は2011年12月22日、現時点での文案をまとめ、弾力条項について「総合的に判断する」との表現を盛り込んだ。民主党内には消費税増税への反対論が強まっており、同条項についても、停止の条件に具体的な数値の設定を求める声がある。

消費税改革は「経済状況の好転」が条件

   同条項が検討されているのは、1997年の消費税率引き上げ(3%から5%へ)の際、折からの金融危機と相まって、消費税増税が景気腰折れの一因とされたことが背景にある。政府税調などでは、「2008年のリーマン・ショック並みの経済変動が起きた場合に増税を中止するといったイメージ」(政府関係者)で議論されている。今年6月、菅直人内閣時代に政府・与党が決めた社会保障・税一体改革成案では、「経済状況の好転」を条件に税制抜本改革を行うと明記している。

   問題は、弾力条項の中身だ。増税に反対する与党議員の間には「デフレ状況での増税はありえない」との主張や、「名目成長率5%が条件」といった声もある。12月7日の政府税調全体会合で、松原仁国土交通副大臣は、「デフレ脱却と経済のパイの拡大が、はっきりと明示的に確認できるということになるだろう」と述べ、景気がはっきりと拡大していることを条件にすべきだと強調した。

   こうした主張には、高めの経済成長率を明記することで事実上、増税を阻止しようとする意図もあり、文面によっては増税が先送りになる可能性もある。

藤井裕久会長の発言に注目集まる

   この議論で、特に注目されるのが民主党税制調査会の藤井裕久会長だ。党長老であり、旧大蔵省出身の税財政のプロ中のプロだけに、若い議員が多い民主党内での重みは格別のものがある。消費税増税推進の最重要人物である藤井氏は11月22日の読売新聞のインタビューで「(実質国内総生産=GDP=成長率)2%なら経済回復だ。国際常識だ」と語った。同30日の毎日新聞のインタビューでは、具体的な数値を盛り込むかについて、「(増税時の)状況を見ながら、そのときの政策責任者が決める。(現時点で)できるわけがない」と語り、数値盛り込みに慎重姿勢を示している。

   藤井氏の真意が不明だが、「GDP成長率2%」が条件となれば、税率引き上げのハードルはかなり高い。政府は消費税率を2013年10月以降に7~8%、2015年度に10%に引き上げたい考えと見られるが、民間シンクタンクなどの多くは2013年度の実質成長率は1%台と見ており、「2%が条件になれば、増税先送りになりかねない」(経済官庁幹部)。

   政府税制調査会などは弾力条項に具体的数字を書き込まない考えだが、小沢一郎元代表に近い議員を中心に消費税増税自体に反対する声が強まる中、年内をメドに決定する予定の一体改革の「素案」の行方は流動的で、弾力条項の扱いも含め、厳しい議論が続く。

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