赤字垂れ流し整備新幹線にゴーサイン 抵抗しなかった財務省の不可解

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   整備新幹線(北海道、北陸、九州の各新幹線)の未着工3区間が、着工認可される見通しになった。新規着工は2008年3月に認可された九州新幹線・長崎ルートの武雄温泉-諫早以来となる。

   ただ、八ツ場ダムなどに続く大型公共工事の再開で、民主党が政権公約に掲げた「コンクリートから人へ」の理念は一段と色褪せることになる。

大災害に備えた「リスク分散」が錦の御旗

   未着工3区間は、北海道新幹線の新函館(仮称)-札幌(211キロ)、北陸新幹線の金沢-敦賀(113キロ)、九州新幹線・長崎(西九州)ルートの諫早-長崎(21キロ)。

   最大のネックだったのは、3区間で約2兆7500億円程度が見込まれる事業費の工面だったが、JR東日本などが鉄道建設・運輸施設整備支援機構に支払う新幹線の施設使用料(年間400億円程度)を充てることで決着した。2011年6月の旧国鉄債務処理法改正で建設財源に回せるようになった。さらに建設期間を、通常10年間程度から15年以上に延長することで1年当たりの負担額を抑え、「安定的に財源を確保できる」とした。

   建設にゴーサインが出た背景には、東日本大震災の影響がある。「震災のこともある。(交通網の)軸を強化したい」(前田武志国交相)というように、大災害に備えた「リスク分散」が錦の御旗になった。特に北陸新幹線について、地元から「東海道新幹線が不通になった際の代替路線」とのアピールが強まった。

   だが、3区間について需要予測に基づいて営業開始から何年で黒字になるか、といった綿密な検討はされなかった。それなりに需要予測を出して建設しながら、予想を大幅に下回って赤字を垂れ流す関西国際空港や本四架橋の例もあるが、今回はその教訓が生かされなかった。

増税反対派の懐柔策なのか

   3区間同時着工も、経済合理性の面から問題が多い。各区間の手前もまだ工事中で、同じ予算をかけるなら、工事中の区間に投入して早く完成させ、少しでも稼ぐのが合理的だ。新区間を着工するにしても、3区間の中でもっとも効果が高い区間から着工するのが筋だが、高速道路や空を含む他の交通インフラとの住み分けを含め、今回、厳しい議論はなかった。

   整備新幹線を巡っては、「本来のブレーキ役も機能しなかった」(与党筋)。ある財務省OBが「従来なら考えられないほど、あっけない決着」と表するように、毎年、新幹線には厳しい態度で臨む同省も、今回は早々に妥協。八ツ場ダムでは最後まで抵抗した前原誠司政調会長も3区間の同時着工に動き、2011年12月15日開かれた民主党政策調査会の会合では「厳しい経済環境を考えれば、今回がラストチャンス」とまで話した。

   消費税引き上げが不可避とされるほど財政状態は厳しく、大震災からの復興財源の確保にも四苦八苦する中での大型公共事業へのゴーサインには、「増税反対派に対して『新幹線を認めるから増税に反対するな』と懐柔したいのではないか」(経済官庁幹部)との声も聞こえる。

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