大もめにもめた会議だった。南アフリカ・ダーバンで行われた国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)は現地時間で2011年12月11日未明、予定を2日延ばして何とかまとまった。
1997年の第3回のCOPで採択された京都議定書の延長と、それに代わるすべての国が参加する新たな枠組みづくりの検討をスタートさせる。地球温暖化防止のため、関係各国は、こんご削減目標などの交渉を重ねることになる。
「排出大国」は加わらず
京都議定書は、二酸化炭素など6種類の温室効果ガスの削減について、日本や欧州連合(EU)などには厳しい削減義務を課す一方、途上国や議定書を離脱した米国は義務がないという「不平等条約」だった。2012年末に京都議定書の期限を迎えることから、COP17では、当面の議定書を延長できるか、そして、その後の「ポスト京都」の新しい枠組みに道筋をつけられるかが焦点だった。
交渉では、EUや干ばつや領土の水没と言った温暖化被害に直面する途上国と、温暖化対策による経済影響を懸念する中国や米国などが対立するなど、利害が錯綜し、難航を極めた。最終的に合意にこぎ着けた議定書の延長期間は、2013年から5年間か8年間。2020年以降は、すべての国が参加する体制に移るとし、法的拘束力のある新枠組みを2015年に採択し、2020年の発効を目指すことになった。
温暖化防止の最大の問題は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの最大の排出国・中国が議定書の削減義務がない途上国扱いだということ。さらに第2位の米国も議定書を離脱して削減義務がない。これにインド、ブラジル、南アフリカを加えた5か国を合わせると、世界全体のCO2排出量の約5割を占める。それだけに、米中などが、まがりなりにも新枠組みを受け入れたのは「大きな前進」(環境NGO)と評価されている。
同時に、新枠組みまでの間、温室効果ガス削減に「空白」を作らないため、京都議定書の延長が必要だった。だが、議定書の延長期間は幅があり、しかも、日本、カナダ、ロシアは参加せず、延長に応じたのはEUが中心で、その排出量は世界全体の15%にとどまる。
日本のリーダーシップはどこへいった
日本は「二大排出国の米中が参加していない京都議定書では、世界全体の温暖化対策としては不十分」と主張。議定書の延長期間に参加せず、新枠組みまで自主的な対策に取り組むことになった。「議定書の枠組みのままでは中国やインドなどとコスト競争力で差をつけられる」と警戒していた経済界は、「議定書の単純延長論にくみせず、積極的に交渉に関与した」(米倉弘昌経団連会長)と評価している。
しかし、肝心の温室効果ガス削減については、東京電力福島第1原発事故に伴う原発停止もあり、2009年に鳩山由紀夫首相(当時)が国際公約した「2020年までに1990年比25%削減」はほぼ絶望的な状況だ。今回、議定書延長期間の削減義務を負わないことも加わり、「日本が地球環境問題に後ろ向きだとの印象を国際的に与えた」(NGO)のは否めない。
現時点で新枠組みの具体的な中身は不透明だ。日米欧中印など全主要排出国が応分の責任を負う公平な新枠組み作りは、議論が具体化するほど、利害対立が先鋭化することが確実だ。京都議定書を議長国としてまとめ上げ、一時は「温暖化対策の国際協調の中心にいた」(環境省筋)日本が、国際環境外交で再び輝けるか、見通しは明るくない。