北朝鮮の金正日総書記の死去を受け、3男の正恩氏が後継者として正式に発表された。だが、専門家からは「本当の後継者だと認識されるまでには数年はかかる」という指摘もあり、集団指導体制になるとの見方もある。権力の空白が生まれた場合、市民による暴動が起こり、それを軍が武力で鎮圧する可能性を指摘する向きもあり、予断を許さない状況だ。
朝鮮中央通信は「チュチェ革命偉業の偉大な継承者」
正日氏が死去したしたとされるのは、2011年12月17日朝のことだ。韓国政府系のシンクタンク「統一研究院」(KINU)では、すでに10年1月時点で「金正日総書記は、2012年以降、この世に存在しない可能性が高い」と予測していた。まさにこれが的中した形だ。この報告書では、かなり厳しい見通しが示されている。今後起こりうるシナリオとして指摘されているのが、(1)正恩氏が権力を継承して世襲(2)軍部が中心の集団指導体制(3)軍から新指導者が登場する、という3つだ。仮に正日氏の死後に権力の空白が生まれた場合、食糧不足や汚職が加速する可能性があり、デモや暴動が起こる恐れもある。その際は(1)軍が出動して武力を行使した結果、流血の事態に至る(2)国民の不満を国外に向けさせるため、朝鮮半島で局地戦を起こすといった可能性があるという。
現時点では、北朝鮮当局は(1)の「世襲」の正統性をアピールするのに躍起だ。国営朝鮮中央通信は、12月19日午後、正恩氏のことを
「チュチェ革命偉業の偉大な継承者であり、わが党と軍隊と人民の卓越した指導者」
と表現。正恩氏への忠誠を誓う市民の声を次々に伝えた。例えば、内閣に勤務するというホ・ソンチョルさん(55)は、
「金正恩同志がおられるおかげで、我々の革命は今日も明日も必ず勝利する」
と正恩氏を称賛。工場従業員のキム・オクソンさん(24)は、
「悲しみを強さと勇気に変えて、敬愛する金正恩同志に忠実であり続ける」
と、涙を流しながら話した。