野田佳彦首相は2011年12月16日夕方に開いた記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の1~3号機の原子炉が「冷温停止状態」を達成し、事故収束に向けた工程表の「ステップ2」を達成したと発表した。
「安定を目指す段階から廃炉を目指す段階に移行する」
野田首相は、「冷温停止状態」の達成を判断した根拠を、
「安定して冷却水が循環し、原子炉の底の部分の格納容器の温度が100度以下に保たれており、万が一何らかのトラブルが生じても、敷地外の放射線量が十分低く保たれるといった点が技術的に確認された」
と説明。今後の取り組みについては、原発そのものについては
「安定を目指す段階から廃炉を目指す段階に移行する」
と、原発の敷地外についての課題として「除染、健康管理、賠償」の3点を挙げた。その上で、
「避難を余儀なくされている住民が、安心して故郷にもどり、以前の生活を再建できる環境を1日も早く作りあげる」
ことを目指すとした。
「なかなか容認できないという空気が強い」
だが、原発周辺住民の帰還のめどはたたないままで、「収束」という言葉に対して違和感を示す質問が続出。
「被災地から見ると、その(原発そのものについては「収束」という)言葉であっても、なかなか容認できないという空気が強い」
との声については、野田首相は、ロードマップを決めた時の定義に従ったなどと説明。
「ステップ2が終わったから、政府の色々な手を抜いていく、福島の地から力をそぐということは全くない」
と釈明した。また、
「(圧力容器の)外に出た燃料がどの温度になっているか誰にも分からないのに、終息宣言または冷温停止宣言をするのは拙速なのでは」
との質問に対する野田首相の答弁は、
「圧力容器の外だけではなく、格納容器の色々な場所を計りながら出している結論だ。格納容器の全体が100度以下になっている。しかも安定的であるということを確認したことがステップ2(の完了)」
と、かみ合わないように見えるものだった。このため、記者からは
「質問に答えていない!」
と、再質問を求める声があがったが、司会者はこれを振り切る形で進行。会見後、フリー記者らを中心に、会見の進行のあり方について批判が相次いだ。