「首相公選制が導入されれば、橋下(徹・次期大阪市長)さんは自分で(首相候補として)出てくるように聞こえましたね」。テレビ出演した橋下氏の話を聞いたコメンテーターは、感想交じりにこう「予言」してみせた。
2011年12月16日朝、橋下・次期大阪市長は、情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)に中継で生出演した。19日に就任する大阪市長としての改革への意欲を強調しながらも、国政レベルの改革の必要性も熱く語った。
「ぼくは市長で精一杯」
「橋下氏自身は国政へ進出するのか」。司会のみのもんた氏らが、波状的に質問した。
橋下氏は「ぼくは市長で精一杯」「いちローカルのトップなだけです」と何度も「謙遜」してみせ、市政改革に取り組む姿勢を強調した。CMをはさみ31分間の出演中に「市長ですし…」などと7回も「市長」を強調し、自身の国政進出をときに否定し、ときにはぐらかした。
それでも、橋下氏の口からは大阪市・府を超える国政レベルの改革への「熱意」がにじみ出た、と周囲に感じさせたようだ。
スタジオのコメンテーター、与良正男・毎日新聞論説委員は、橋下氏の話をひとしきり聞いた後、「首相公選制が導入されれば、橋下さん、自分で出てくるように聞こえましたね、私は」と、橋下氏の「国政への熱意」を指摘した。
「いや、とんでもないですよ」。橋下氏は右手を顔の前で何度も振って否定した。「笑っているような、いないような」表情だった。
みの氏も「『市長ですから』という割には、はっきり(国の改革について)おっしゃるじゃないですか」「やっぱり国政に相当影響を出したいと…」と複数回、指摘した。
大阪都構想は全国的改革への「のろし」
橋下氏のこの日の論点を要約すると、次のようなものになりそうだ。
(1)今の日本は「議論ばかりで物事を決めない民主主義」になっており、「決める民主主義」に仕組みを変える必要がある。(2)選挙で直接選ばれたリーダーが、議論の末、「最後は独断で進めていく」ことが必要だ。(3)地方の首長は選挙で直接選ばれるリーダーなので、意志ある首長には改革が可能だが、議員内閣制の国政では、「誰が首相をやっても」改革は前に進まない――などと指摘している。
そして、こうした旧来の仕組みを改革するには、「首相公選制と道州制(導入)しかない」と橋下氏は訴える。橋下らが進める大阪都構想の改革は、「改革には『独裁ではない独断』、リーダーシップが必要だ」ということを全国に知らしめるモデルケースであり、いわば「改革ののろし」というわけだ。
その先には、リーダーシップの必要性の認識が全国的に高まれば、首相公選制導入を争点にした衆院選が行われる、という展開を見据えている。
橋下氏が語った内容は、従来の主張の「おさらい」ではあったのだろうが、数日後からいよいよ大阪市長に就任するというタイミングだったこともあってか、闘志あふれる印象をスタジオ陣に与えたようだ。
現状の議員内閣制では首相になれない
橋下氏は、自身が代表を務める「大阪維新の会」の国政進出について、「まずは(既存政党の)国会議員にお願いする」、それでも法律改正などへ協力が得られなければ、近畿一円で70人規模とも示唆する国会議員候補を擁立、と2段構えをみせている。
しかし、橋下氏は16日の朝ズバで、大阪市政改革は1期の任期内に達成できるのではないかと問われると、「その後は普通の府民になります」と答え、自らの国政進出を否定した。
一方で、現状の議員内閣制のまま国会議員になったとしても「僕は議員グループの中で(首相に)推される人物ではない」、「議員内閣制には(自分は)向かない」とも語っている。
ならば、近い将来もし首相公選制が導入されたら、橋下氏はどう動くのか――。その答えは明らかなように見える。