年金「払いすぎ」7兆円 12年度から1%減額の方向

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   過去の物価下落時に特例で据え置かれ、本来より高い額が払われている年金が、2012年度から減額される方向になった。税と社会保障の一体改革のうち、厚生労働省が12月5日にまとめた社会保障分野の中間報告に明記された。

   野田佳彦政権は消費税増税を盛り込んだ一体改革の素案の年内決定、通常国会での法案成立を目指している。、社会保障分野で負担増の項目は軒並み先送りされる中、年金減額が案外スンナリ決まり、「予想外」(財務省筋)と拍子抜けの声も出ている。

厚生年金「標準世帯」で月2300円の減

   年金は毎年度、物価の変動に応じて支給額が増減調整される。しかし、自公政権が2000年度からの3年間、物価下落にもかかわらず、減額を見送ったため、現在の年金額は本来より2.5%分多い。「払いすぎ」の累計はこれまでに7兆円に達し、このまま放置すれば毎年1兆円ずつ余分に払い続けることになるという。

   今回の是正は、過去の7兆円を取り返そうというのではなく、今後の払い過ぎをなくしていくもの。具体的には、毎年0.8~0.9%ずつ減額し、3年かけて解消する案を厚労省は検討している。ただ、今年の物価下落分(0.2~0.3%程度の見込み)を加えると、2012年度の減額幅は1%程度になる可能性があり、その場合、国民年金(満額で月約6.6万円)の人で月約660円、厚生年金(専業主婦がいる標準世帯で月約23万円)の世帯で月約2300円の減額になる計算だ。

   民主党内では、特例解消の期間を5年に延ばし、毎年度の減額幅を0.5%程度に圧縮するよう求める声があり、詳細は流動的だ。実施時期は、関連法案の成立から半年程度の周知期間が必要なことから、厚労省は来年4月分からの 実施は困難と見て、10月支給分からとする方向で調整にしている。

背景には財務省の「強い希望」あり

   こうした政府・与党の動きに、野党側は、公明党の石井啓一政調会長が4日のNHK番組で、「政府が本来やるべきことはデフレ脱却。給付引き下げで特例水準を解消するべきではない」と反対したが、自民党の宮沢洋一・厚生労働部会長が同じ番組で、党内で議論していないとした上で「民主党内で議論が進んでいることは歓迎している」と表明し、公明党と評価が分かれている。

   こうして、順調に減額に向けた作業が進んだのは、周到な準備の賜物といえる。11月22日に民主党の年金作業チームが段階的な引き下げの必要を指摘。続いて政府の行政刷新会議も、23日の「提言型政策仕分け」最終日に2012年度から「払いすぎ」を解消するよう提言し、小宮山洋子厚労相も直ちに前向きな姿勢を表明。24日には藤村修官房長官が「実現に向けて検討を進める」と追認――という見事な連携で一気に流れを作った。

   この背景には、財務省の強い希望があったと指摘される。消費税を含む一体改革をにらみ、その前に道筋を明確にしないと是正のチャンスを逸してうやむやになりかねないと危惧したのだという。

   ただ、税と社会保障の一体改革の議論はこれからが本番で、民主党内の消費税増税反対論は根強い。「払いすぎ是正は一体改革の一部でもあり、議論の動向によって、とばっちりを受けないとも限らない」(与党筋)。自民党も、「賛成」を決定したわけではなく、「自分たちが与党時代に制度破りをした負い目がある」(同)から反対しにくいとはいえ、「与野党対決の流れで"野党バネ"が働く可能性もある」(財務省筋)。まだ、勝負あった、と判断するのは早計のようだ。

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