背景には財務省の「強い希望」あり
こうした政府・与党の動きに、野党側は、公明党の石井啓一政調会長が4日のNHK番組で、「政府が本来やるべきことはデフレ脱却。給付引き下げで特例水準を解消するべきではない」と反対したが、自民党の宮沢洋一・厚生労働部会長が同じ番組で、党内で議論していないとした上で「民主党内で議論が進んでいることは歓迎している」と表明し、公明党と評価が分かれている。
こうして、順調に減額に向けた作業が進んだのは、周到な準備の賜物といえる。11月22日に民主党の年金作業チームが段階的な引き下げの必要を指摘。続いて政府の行政刷新会議も、23日の「提言型政策仕分け」最終日に2012年度から「払いすぎ」を解消するよう提言し、小宮山洋子厚労相も直ちに前向きな姿勢を表明。24日には藤村修官房長官が「実現に向けて検討を進める」と追認――という見事な連携で一気に流れを作った。
この背景には、財務省の強い希望があったと指摘される。消費税を含む一体改革をにらみ、その前に道筋を明確にしないと是正のチャンスを逸してうやむやになりかねないと危惧したのだという。
ただ、税と社会保障の一体改革の議論はこれからが本番で、民主党内の消費税増税反対論は根強い。「払いすぎ是正は一体改革の一部でもあり、議論の動向によって、とばっちりを受けないとも限らない」(与党筋)。自民党も、「賛成」を決定したわけではなく、「自分たちが与党時代に制度破りをした負い目がある」(同)から反対しにくいとはいえ、「与野党対決の流れで"野党バネ"が働く可能性もある」(財務省筋)。まだ、勝負あった、と判断するのは早計のようだ。