プロ野球巨人の内紛劇に今度は報知新聞が巻き込まれた。巨人の球団代表などを解任され、「訴訟会見」を開いた清武英利氏が、渡辺恒雄・球団会長から「報知新聞の編集局長に飛ばすぞ」と恫喝された、と主張したのだ。
清武氏による「渡辺会長の発言暴露」では、水面下のコーチ人事が表沙汰になり、元巨人投手の江川卓氏が「さらし者にされた」と一部の同情を買っていた。今度は、報知新聞が巻き込まれ、インターネット上で、「報知は発言を報じるのか」「報知の編集局長は閑職なのか?」などと注目を集めてしまった。
一部のスポーツ新聞が大きく報じた
清武氏は2011年12月13日、渡辺会長や巨人、読売新聞グループ本社を相手取り計6220万円の損害賠償を求める訴訟を起こし、会見を開いた。すでに渡辺会長らは清武氏を訴えている。内紛劇は訴訟合戦に発展した。
この会見で清武氏は、コーチ人事について渡辺会長に翻意を試みた際に「君がまだ文句を言うのなら、報知新聞の編集局長に飛ばすぞ」と恫喝されたと話した。報知新聞は、読売グループのスポーツ新聞だ。
清武氏の主張通り、渡辺会長が本当に「飛ばすぞ」発言をしたのかどうかはさておき、清武氏が恫喝だと受け止めたとすると、読売新聞や巨人の方が、報知新聞より格が相当高いという認識が透けて見える。
「飛ばす」先が、報知新聞の編集局長だったことで「意外感」があったのか、「飛ばすぞ」発言は注目を集めた。一部のスポーツ新聞(12月14日付、東京版)は発言を見だしに使って大きく報じた。
日刊スポーツは、4段見だしで「渡辺会長から『飛ばすぞ』」と伝えた。サンケイスポーツは、渡辺会長の顔写真のすぐ下に「飛ばすぞ」と大きな文字。わきに見だしとしては小さな文字で「報知新聞の~」のくだりも載せている。
「報知の編集局長は要職じゃないのか。閑職?」
1ページの左から右まですべて使って「報知新聞の~飛ばすぞ」と横見出しをつけたのは、東京中日スポーツだ。
報知新聞(スポーツ報知)は、清武氏の提訴について、内紛経過の時系列表もつけてそこそこのスペースを割いて報じた。しかし、「飛ばすぞ」発言は記事で触れてない。
「飛ばすぞ」発言はネットでも注目を集めた。ツイッターや関連ニュース(ネット配信版)のコメント欄などをみると、相当数の反応が寄せられている。
報知新聞編集局長の位置付けに驚いた人が少なくないようだ。
「報知ってそういうポジションなんだ」「報知の編集局長は要職じゃないのか。閑職?」「左遷ポジションなの!?」
といった調子だ。
報知新聞への同情論も目立つ。
「現在の編集局長は微妙な気がするだろうな」「局長はじめ編集局の人は惨め過ぎる」「え?俺、左遷だったの???ってなっちゃうじゃん、かわいそうに」「不憫だ」
報知新聞は怒るべきだ、との主張もある。
「報知新聞のスタッフも、少し怒った方がイイんじゃない?」「報知の編集局長、怒れよ」
と促している。怒るべき対象が「発言主」とされる渡辺会長なのか、「暴露」した清武氏なのかは示されていない。
テレビ朝日系の情報番組「ワイド!スクランブル」の公式ツイッターも「参戦」した。
「(発言が)ホントだったら報知新聞にも失礼なコメントだけど…」
報知新聞「コメントは差し控えさせていただきます」
報知新聞は怒っているのか。現在と過去の編集局長の「出身」は「読売新聞なのか報知新聞なのか」や、「飛ばすぞ」発言についてコメントをきいてみた。いずれの質問に対しても
「コメントは差し控えさせていただきます」
との回答が返ってきた。
ちなみに読売新聞が過去に報じた報知新聞の幹部人事記事によると、11年6月時の新・東京本社編集局長は、前「役員待遇大阪本社総務局長」だ。その前の編集局長も「大阪本社総務局長」からの就任となっている。2人とも、さらに数年前の人事までさかのぼってみた範囲では、報知新聞内の異動を続けているようだ。
適当に比較的新しい報知新聞人事記事を6、7本読んでみた範囲では、読売新聞の編集局幹部から報知新聞へ異動した例としては、「取締役編集担当に就任」など数例があった。編集局以外では、読売新聞の東京本社販売局長が、報知新聞の代表取締役社長に就いた例もあった。「編集局長へ」の例は見あたらず、巨人からの異動者も目につかなかった。