現地採用した女性の事務職員にセクハラ行為を行ったと週刊誌に報じられた田村義雄・駐クロアチア大使が、大使の任を解かれることになった。外務省は大使の処分はせずに単なる「人事異動」で決着させる見通しだ。
田村氏は東大法学部を経て1971年に大蔵省(現財務省)に入省。財務省関税局長などを経て06年9月から08年7月まで環境事務次官を務めた。09年5月にクロアチア大使に着任している。
20代クロアチア女性事務職員にセクハラ行為?
スキャンダルが明らかになったのは、2011年12月5日発売の「週刊ポスト」12月16日号。同誌によると、田村氏は20代のクロアチア人の女性事務職員に対して、公用車後部座席で強引にキスをしたり、抱きついて体を触ったりするセクハラ行為を行った疑いが持たれている。さらに、この女性が一家の家計を支えていたこともあって、職を失うのを恐れて半年間にわたって泣き寝入りを余儀なくされたという。だが、10年11月に本省に告発状が届いたのをきっかけに、11年1月に査察官が現地に派遣され、事情聴取を行ったという。
この件に関する公式な反応は少なく、玄葉光一郎外相が2011年12月7日の会見の場で、週刊ポスト記者の質問に対して回答した程度だ。玄葉氏は、セクハラ報道については「承知している」ものの、
「一般論として申し上げるが(公務員として不適切な行為が)あれば、これは当然ながら厳正に対応し、必要ならば適切な処分を行うというのが私の方針だ」
と、一般論を述べるにとどまった。
事実上の更迭との見方も
新たな動きがあったのが、その翌日の12月8日。共同通信などによると、12月20日にも発令される辞令で、田村氏は大使を交代させられるという。大使の任期は通常であれば3年程度なので、事実上の更迭との見方もできる。外務省は田村氏がセクハラ行為を行った可能性はあると見ているものの、(1)田村氏がセクハラ行為を否定している(2)再発防止策がとられている、ことなどを理由に処分はせずに人事異動にとどめた様子だ。
外務省の人事課では、
「報道は承知しているが、事実関係についてはコメントを差し控えたい。セクハラ行為が確認された場合は、これまでも厳正に対処してきている」
としており、公式にはセクハラの事実を認めていない。
クロアチアでは12月4日に総選挙が行われ、8年ぶりの政権交代が確実な情勢だ。クロアチアメディアの現時点の関心は政局にあるため、今回のセクハラ問題については大きく報じられてはいない。だが、田村氏は離任の際にはクロアチア政府にあいさつに出向く必要があり、その場でクロアチア側が不快感を示す可能性もある。