幸福国家「ブータン」ばかりなぜ目立つ 日本の「豊かさ」再調査へ

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   ブータンのワンチュク国王夫妻が来日し、同国が国づくりの理念として掲げる「国民総幸福量」=GNH(グロス・ナショナル・ハッピネス)が注目されている。ブータンは国民1人当たり国内総生産(GDP)が日本の20分の1なのに、国民の97%が「幸せ」と答える「超幸福国家」だ。

   一方でなぜ日本では「幸福度」は高くないのか。このところ、さまざまな視点から、日本の幸福度を測り直そうとする動きが盛んだ。

経済規模ではなく心の幸福度を重視

   内閣府は20011年12月5日、「幸福度に関する研究会」で検討していた「幸福度指標」について、試案を発表した。

   基本的考え方として、経済規模ではなく、心の幸福感を重視するとした上で、①住環境や仕事など「経済社会状況」、②「心身の健康」、③家族や地域・自然とのつながりを示す「関係性」――の三つの指標を設定。これを、11分野に分け、計132の個別データをもとに「幸せ」を数値化しようというものだ。来年以降、内閣府が試験的に関連データを収集し、指標として有効かなど、検証を進める。

   1カ月前の11月9日には、法政大学大学院が「幸福度」の都道府県別の順位を発表した。40の社会経済統計の指標について独自に集計したもので、自然環境が豊かで、持ち家比率が高く、出生率が高く、犯罪も少ない福井、富山、石川の北陸3県がベスト3を占めた。一方、失業率の高さ、生活保護受給者が多いことや治安の悪さが響いて、大阪が最下位になり、ちょうど行われた大阪府知事選、市長選でも候補者間の論争に引用された。

都道府県ごとのランキングせず

   ただ、政府の「幸福度指標」は、全項目を統合した数値は算出しない。あくまで各項目の良し悪しから社会状況を診断、政策運営に生かすという建前だ。要は都道府県ごとにランキングしないということだ。

   実は、これは、過去に苦い経験があるからだ。政府は「新国民生活指標」(通称・豊かさ指標)というデータを1992年からまとめていた。経済など生活関連の約140項目の指標を使って、「住む」「働く」「育てる」「学ぶ」「遊ぶ」など8分野に分けて数値化したもので、都道府県別にランキングも発表していた。

   ところが、住居や社会資本などハードの整備状況のウェートが高かったため、持ち家比率や住居の広さ、リゾート施設が多いなど地方の点数が高くなりがちで、公園その他の社会資本整備が追いつかない大都市部が低くなる傾向があった。人口が急増している埼玉県が6年連続で「最下位」になるなど、下位の県から不満が噴出し、1998年を最後にランキング発表は取りやめになったという歴史がある。今回の「幸福度指標」でランキングを出さないのは、順位付けによる無用な摩擦を避けたいという狙いだ。

国民の関心は「安心できる年金制度」

   ただ、かつての豊かさ指標と比べ、今回の幸福度は、主観的な数字も含めるなど、工夫はしている。例えば、「経済社会状況」の判断材料には、子どもの貧困率や育児休暇の取得率のほか、「放射線量への不安」なども採用。「関係性」では、家族や友人との接触密度とか、「困っている人を助けるのは当然だと思う」割合なども活用するという。

   こんな指標の開発に政府が熱をいれるのは、日本人の幸福感が低いことがある。昨年4月、内閣府がどの程度幸福と感じているか、という調査をまとめた。「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、11段階で聞いた平均が6.5点(男6.2点、女性6.7点)。欧州28カ国で実施された同様の調査は、デンマーク8.4点、フィンランドとノルウェー8点、スイス7.9点などが高く、欧州平均は6.9点。イギリスの7.4点、ドイツの7.2点、フランスの7.1点に比べても日本は低い。

   なぜか。同じ内閣府の調査で、国民の幸福感を高めるために国が目指すべき目標は、という質問への回答で、1位が「安心できる年金制度」、2位が「安心して子を産み育てられる社会」、3位が「雇用や居住の安定確保」という順だった。経済大国になり、豊かになったのに幸福度は低いと、多くの人が漠然と感じているが、実は経済大国といいながら、年金、雇用など生活の経済面の不安が大きく、それが幸福度を低くしていると読める調査結果だ。

   幸福感を高めるために、年金や医療など将来不安をなくし、格差社会といわれる社会の二極化を是正し、子育ての不安を解消することが必要――。真理はシンプルな回答に宿るようだ。

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