例年より2カ月遅れで、「短期決戦」の大卒の就職戦線(2013年春採用)が本格的にスタートした。会社説明会やセミナー解禁が2カ月遅くなった影響はどうか。また、今年の方式が来年以降を続く保証はない中、今後の就職戦線はどうなっていくのか。
実際の採用試験や面接などの選考開始は「4月以降」のままで、これまでと変わりない。このため関係者の間では「学生が企業を研究する時間が短縮されると、4月の採用試験で学生は十分な知識がないまま、知名度の高い大企業に殺到するため、例年よりも競争が激化するのではないか」との指摘が出ている。
これまでは会社説明会は10月に解禁
昨年まで新卒者(大学3年生)向けの会社説明会は10月に解禁されていた。今年から2カ月遅れになったのは、大学側から「早期の選考活動は学業に影響が出る」との指摘を受けた経団連が、選考活動の指針となる「倫理憲章」を改正したためだ。
かつて就職活動に関するルールとしては、文部省(当時)と労働省(同)が企業側と結ぶ「就職協定」が存在したが、企業間の競争激化で形骸化したため、1996年に廃止された。しかし、協定廃止は企業側から「ルールがないと、かえって混乱する」との指摘が出たため、1997年に経団連が自主的に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を制定。法的拘束力はないものの、企業側に採用活動の早期化を自粛するよう呼びかけてきた。
近年は、3年生の6月ごろから企業のインターンシップ(就業体験)が始まるなど早期化が進んでいる。大学側の「学業に支障が出る」との指摘を経団連も考慮せざるを得ず、2011年3月、会社説明会だけでなく、就職情報サイトで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始など「広報活動」を従来の8月から10月とすることを決めた。
選考開始遅らせば、就職できない学生さらに増える?
経団連が会社説明会などを2カ月遅らせたものの、採用試験や面接を4年生の4月以降のままとしたのは、リーマン・ショック以降、再び「就職氷河期」となった大学生の就職率が厳しいからに他ならない。2011年春卒の大卒就職率は91.0%と過去最低を更新した。このため経団連は「4月の選考開始を遅らせば、就職できない学生がさらに増える可能性がある」と見ている。
一方、経済界の間では「4月以降」の選考開始をさらに遅らせるべきだ、との意見もある。経済同友会や、商社でつくる日本貿易会は、面接や試験などの選考を4年生の「8月以降」にすべきだと主張している。大学生の就職活動が3年生の秋に始まり、早ければ4年生の春で決着するという現状のスケジュールは、かつて就職活動が4年生になってから始まった時代と比べると、大学生が落ち着いて学生生活を送れるのは2年生までということになる。学生の間では、これまで通り4月以降の選考を望む声が強いが、就職活動のあまりの早期化には、採用する企業側も危機感を抱いているようだ。