福島第1原発事故後も周辺農家で稲作が行われていることについて「サリンをつくったオウム信者がしたことと同じだ」などと不適切なツイートしたとして、群馬大学教育学部の早川由起夫教授(火山学)が訓告処分を受けた。
早川氏は、原発事故後にいち早く放射性物質の拡散状況を地図にまとめた「放射能汚染地図」を作成・公開していることでも知られている。処分に対し、「こういう暴言を吐いて強制的に伝えないとならないくらい事態は深刻」とも主張。ネットでは訓告に賛否両論があるようだ。
発言は「被災者や農家の人々に対する配慮を著しく欠く」?
早川氏は放射性物質に汚染された土壌の危険性を訴える中で、原発周辺の農家が稲作を続けていることについて、ツイッター上で
「セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米をつくる行為も、サリンをつくったオウム信者がしたことと同じだ」
などと批判。この発言に対する苦情が大学や文科省などに寄せられたという。
大学側は書き込みをやめるよう求めたが早川氏がこれに応じなかったため、2011年12月7日付けで訓告処分が下された。早川氏がツイッターで公開した文書によると、処分の理由は
「福島県の被災者や農家の人々に対する配慮を著しく欠く発言は、運営に要する経費の大部分を国費によって賄われている国立大学の教員として不適切な発言と言わざるを得ず、『本学の名誉も若くは信用を失墜する行為』を禁止する就業規則の規定に抵触している」
というもの。なお、今回の訓告は懲戒処分にはあたらないが、
「今後、不適切な発言が繰り返される場合は、懲戒処分を含む厳正な対応をとらざるを得ない」
と、くぎをさしてもいる。
普賢岳の火砕流被害で苦い思い
早川氏のツイッターやブログの書き込みによると、早川氏の問題意識は1991年の雲仙普賢岳大火砕流にあるようだ。具体的には、専門家の間では事前に火砕流の危険性が認識されていたにも関わらず、それを報道陣に理解させられなかった結果、消防団員らと合わせて計43人という多くの犠牲者を出してしまったことを受け、同様の事態を繰り返したくないという思いがあるようだ。
早川氏は山間部の放射線量を独自に測定し、それを地図にまとめて公開している。ブログのコメント欄には、
「たくさんの箇所を細かく測定し、もっと広域で詳しい汚染地図があると嬉しいです」
と、さらに充実を求める声が書き込まれている。また、自分で測定した放射線量を書き込む利用者も多い。
実際、早川氏は訓告を受けてからも、ツイッターに
「こういう暴言を吐いて強制的に伝えないとならないくらい事態は深刻なのだ」
「私がみつけた事実と私の考えを世に広める絶好のきっかけをもらった。これを逃してはならない」
などと書き込んでいる。
群馬大教育学部によると、件数は明らかにしていないが、賛否両論の意見がメールや電話で寄せられているという。
ネット上では、早川氏の発言について、「福島の人への思いやりが欠けている」「共感できない」という声もあるが、「言論統制」「他の大学の教官などへの見せしめ」などという反発もある。