「分かっている」のに実行できない民主党
ところが、今の政権は、社会保障と税の一体改革というものの、中身は各省縦割りで、社会保障を人質にして消費税を増税するための方便になっている。
歳入庁を作ると、税・保険料の不公平がなくなる。日本年金機構と国税庁の把握している法人数の差80万件による保険料の徴収漏れ(消えた保険料)や国民番号制度がないことによる税徴収の不公平がある。さらに、消費税のインボイス(仕入れ時消費税額の記載書類)がないことによって消費税の漏れもある。
消えた保険料で10兆円、国民番号制度なしで5兆円、消費税インボイスなしで3兆円、これらで20兆円程度にも達する可能性がある。歳入庁(それに伴い国民番号制の導入)と消費税インボイスを先進国でやっていないのは日本だけだ。
そもそも、増税という税率をあげる前に、不公平の是正が先決だ。税の不公平は穴のあいたバケツだ。穴のあいたままでいくらバケツをすくっても入る水は少ない。労多くして、不公平だけを助長する。
こういう話をしたら、参加していた民主党議員から、その話は政権交代前にしていたという。その通りだ。それができていないから、話したわけだ。
イギリスでは、歳入庁を1999年に作っている。検討に1年間、実施に1年間と2年程度でできるのに、なぜ日本でできないのか不思議でならない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。