「ひょっとすると、今度こそ株価は底を打ったのではないか」。2011年11月末あたりから、兜町の証券マンの間でこんな声が聞かれ始めた。日経平均株価は週明け、12月6日は反落したものの、5日まで3日続伸になり、一時、11月9日以来、約1カ月ぶりに8700円を回復した。7日の終値も8722円で、前日比147円高だった。
イタリアの財政再建策決定で欧州債務不安がやや和らいだようだが、先行きどうなるかを判断するには、今週末の欧州連合(EU) 首脳会議がカギを握りそうだ。
「ゆうちょ銀行が買い支えた」
「コツンと打った」。兜町で株価が底を打ったことを表現する言葉だ。これが聞かれ始めたのは11月28日の月曜日。その前営業日である25日金曜日には、日経平均株価が5営業日連続下がり、年初来安値も更新し、8160円01銭で引けた。
日本市場に大きな影響力を持つ米 ニューヨーク市場も25日はベルギーの信用不安などを背景にダウ工業株30種 平均は7営 業日続落して終えた。それだけに、週が明けた28日の東京市場では、取引開始前から「さて、今日はどこまで落ちるか」と不安視する声も少なくなかった。
しかし、ふたを開ければ日経平均株価は反発し、終値は前週末比127円48銭高の8287円49銭。 特に目立った好材料があったわけでもなく米株安にもかかわらず反発したため、「コツン」の音を聞いた人がいたわけだ。「ゆうちょ銀行が買い支えた」とのまことしやかな解説もあったが、前週までの連日の年初来安値更新に「いくら何でも売られすぎ」とのムードもあった ため「やはり潮目が変わったのではないか」との見方も出始めたわけだ。
日米欧の6中央銀行が市場へのドル資金供給を拡充
強力な援軍も現れた。11月30日水曜日夜11時。 日銀の白川方明総裁は異例の緊急会見を開き、日米欧の6中央銀行が欧州債務危機の拡大を防ぐため、市場へのドル資金供給を拡充すると発表した。欧州不安によって緊張の高まる金融市場でドル資 金を調達しやすくする狙いだ。白川総裁自身が「時間を買う政策」と述べたように抜本的な解決策ではない「時間稼ぎ」だが、米欧株式市 場は世界の中央銀行の協調策を好感。中国人民銀行も同じタイミングで金融緩和にかじを切ったことも後押しし、30日 のニューヨークダウは490ド ルも上昇し、一気に1万2000ドルを回復した。翌12月1日の日経平均株価も162円77銭上昇し、8597円38銭 と8600円まであと一歩のところまで回復した。
東京株式市場で株価とともに問題視されていた出来高、売買代金の低調さも11月28日に始まる週は一服。出来高(1日平均)は前週比15%増の16億5200万株、売買代金(同)は同14% 増の9066億円に持ち直した。
ただ、欧州債務不安が払拭されていないのは懸念材料。まずは8~9日のEU首脳会議で具体的な成果がどこまで得られるかどうかが、今後の株価の動向を大きく左右しそうだ。