光学機器メーカー、オリンパスの第三者委員会は、調査していた巨額の「損失隠し」について2011年12月6日、「当時の社長らトップの主導によって行われた」と認定した。
そのうえで、「経営の中心部分が腐っており、その周辺部分も汚染され、悪い意味でのサラリーマン根性の集大成というべき状態だった」と痛烈に批判した。その一方で、「一連の問題は秘密裏に行われたもので、企業ぐるみの不祥事が行われたわけではない」と、オリンパスのもつ高い技術力を支える、真面目な従業員を擁護した。
反社会的勢力との関係「確認できなかった」
第三者委員会が公表した報告書によると、一連の「損失隠し」は、1998年ごろから、時価会計の導入で巨額の含み損が表面化する事態を回避するために海外のファンドに損失を付け替える「飛ばし」の手口で不正な会計処理を始めた。
隠した損失額は2003年時点で1177億円と認定。その後も新たな投資などの失敗などで「1348億円も(損失隠しの)スキームの維持に使われた」という。
当時の財務担当者だった山田秀雄前常勤監査役や森久志前副社長が主導的な役割を果たし、さらに当時社長を務めていた岸本正寿元会長と菊川剛前会長らが「報告を受けたうえで、不正な会計処理を了承していた」と断定した。
経営トップが秘密裏に行い、かつ巧妙な隠蔽工作だったため、長期間にわたり発覚しなかったが、取締役会も形骸化して不正を止められず、監査法人も「責務を十分は果たすことができなかった」と指摘した。
一方で「損失隠し」のスキームを実行するにあたり、同社の山田前監査役と森前副社長の「相談役」として、グローバル・カンパニーの横尾宣政氏、アクシーズ・ジャパン証券の中川昭夫社長、アクシーズアメリカの佐川肇社長の3人の「外部協力者」が存在した、としている。
損失隠しに充てられた資金の一部がアクシーズなどに流れていることはわかっていて、第三者委員会は、行方がわからない佐川氏以外の2人から事情聴取したところ、「彼らは正当な報酬だと主張している」(オリンパス第三者委員会の甲斐中辰夫委員長)という。ただ、甲斐中委員長は「正当ではないと考えている」。
また、反社会的勢力との関係を示す証拠は「確認できなかった」と結論づけた。
私的流用「証拠は見当たらない」
経営幹部らが損失隠しの過程で資金を私的流用したのではないか、という質問に、オリンパス第三者委員会の甲斐中委員長は、「証拠は見当たらない」と述べた。
また、旧経営陣らの法的責任については「すでに捜査段階でもあり、コメントは控えさせていただく」と話した。
一方、オリンパスは同日、第三者委員会の報告書を受領したと発表した。「第三者委の調査結果と提言を真摯に受け止め、今後はより迅速に、一日も早い信頼回復に向けての抜本的な取り組みを検討していく」とコメントした。
同社は具体的な数値を確定したうえで、2007年から11年までに提出した有価証券報告書を再提出する予定。また、2011年4~9月期(第2四半期決算)の報告書について12月14日までに発表する準備を進めているとしている。
この日までに決算発表ができないと同社株は上場廃止になる。